神殺しのクロノスタシスⅣ

「じゃあ、天音君は!?天音君はどう思う!?」

「えっ、僕ですか?」

いきなり話を振られ、びくっとする天音。

天音の、この困ったような顔。

勘弁してよ…って思ってそう。

こんな、下手をしたらイレースの尾を踏みそうな話題に、自分から巻き込まれるのは御免だよなぁ。

気持ちは分かるが、この場に来てしまったからには、逃げられない。

そして、追い詰められた天音が出した結論は、

「そ、そうだな…。来年度の予算に回しても良いけど…。…あっ、そうだ。これを機に、学院の備品を新しくするのはどうかな」
 
という、めちゃくちゃ当たり障りのない回答。

「学院の為にもなるし、新しいものになったら、使ってる生徒達も喜ぶだろうし…」

「…天音さん」

「な、何…?ナジュさん…」

「あなたって人は…何と言うか…実につまらない人ですね」

「えっ」

真顔のナジュに、酷いことを言われる天音である。

「そんな無難オブザ無難みたいな回答…小学生でも出来ますよ。もっとこう…ないんですか?全米が震撼するような、ユーモア溢れるお金の使い道は…」

「え、え、えぇぇぇ…」

そして無茶振り。

何だよ、全米が震撼する金の使い方って。

ボーナス上げろ、って返答したお前が言って良い言葉か?

「そ、そ、そう言われても、思いつかな…。…あっ、じゃあその…実技用の魔導人形を買い足すとか…」

「0点ですね」

「…何で…?」

天音が可哀想過ぎるから、もうやめてやってくれても良いかな。

今のところ、イレースに続いて、一番マシな案を出してるんだからさ。

「じゃあ次!羽久はどう思う!?」

俺かよ。

「羽久さん。ここは先輩教師として、ちゃんとユーモアある回答をお願いしますよ」

何言ってんだお前。

金の使い道にユーモアを求めるんじゃない。

そして俺は、天音案に賛成だ。

で、備品を買い替えるのも悪くないが、俺が推薦したいのは、

「図書室に、本を増やすのはどうだ?」

と、俺は提案した。

「…つまんねー…」

ナジュは黙ってろ。

これは大喜利大会じゃないんだよ。

「本なら買い切りだし。回り回って、生徒の為にもなるだろ」

「確かに。天音さんと羽久さんの案は、考慮に値しますね」

イレースからもお墨付きを頂いた。

良かった。とりあえず、こと金の使い道について、イレースを敵に回すのだけは避けたかったからな。

俺はナジュと違って、真っ黒焦げに焼かれたら死ぬから。

身の安全を、最優先に考えるのは当然だ。