その日シルナは、朝から学院の教員全員を学院長室に招集した。

全く、何だって朝イチで、寝惚けたおっさんの顔を見なければならないんだ、と思ったら…。

「おい、シルナ来たぞ」

「あ、羽久いらっしゃ〜い♪」

満面笑みのシルナが、るんるんとテーブルにマグカップを並べていて。

反射的に殴りたくなるのを、俺は必死で抑えなければならなかった。

何だこいつ。朝から気色悪っ。

「羽久が〜♪私に失礼なことを考えてる気がするけど〜♪今はあんまり気にならな〜い♪」

やっぱり殴りてぇ。

良いんじゃね?俺、もう衝動を抑えなくても良いんじゃね?

皆考えてみろよ。出勤前のただでさえ忙しいときに、上司に呼び出しを食らって。

何だよ面倒臭いな…と思いながら、上司の部屋に行ってみたら。

頭の中お花畑の上司が、スキップしながらマグカップを並べている。

おまけに部屋の中は、思わず吐き気を催すほどに、濃厚なチョコレートの匂いが立ち上っていた。

朝からこれは気持ち悪いよ。

案の定。

「…何なんですこの部屋は…」

「うわー…。チョコくさっ…」

「うっ…」

俺の後からやってきた、イレース、ナジュ、天音の三人も、思わず学院長室の入り口で足を止める始末。

天音大丈夫か。

「あ、皆いらっしゃ〜い!はいっ、これ皆に食べてもらおうと思って!」

シルナは、テーブルの上に並べられたチョコ菓子を、それはそれは自慢げに見せた。

テーブルには人数分の、ほかほかと湯気を立てる濃厚なフォンダンショコラ、チョコ味のシフォンケーキとチョコクリーム、生チョコとトリュフチョコ…等々。

いかにも、シルナが好きそうなチョコ菓子の数々が並んでいた。

更に極めつけは、マグカップになみなみと入った、チョコチップとチョコソースをかけ、生クリームを添えたホットチョコレート。

成程、部屋の中がこんなにチョコ臭いのも納得というものである。