その日の夜。
「シュニィちゃんから、連絡があったよ」
二人きりになった深夜の学院長室で、シルナはそう切り出した。
「何の?」
「ミルツちゃんの処遇について」
…あぁ。
それについては、穏やかではいられないな。
特に、明朝出発する珠蓮にとっては。
「彼女は、国内の魔導師排斥論者をけしかけて『サンクチュアリ』を扇動し、国内の治安を乱し、聖魔騎士団魔導部隊の大隊長を罠にかけた」
考えてみると、結構ヤバいことしてるよな。
それ以上に、賢者の石の封印を解くというヤバいことをしているが…。
「でも…賢者の石については、裁かれないみたいだ」
「何?」
「賢者の石の封印について、公式に明らかにする訳にはいかない。だから、吐月君達を罠に嵌めたことも…単に、『聖魔騎士団の強制立ち入りを拒否、抵抗した公務執行妨害罪』のみを問われて、それ以上の罪は課せられないそうだよ」
…それは…。
それなら、いくら余罪が…『サンクチュアリ』を扇動して国内の治安を乱した罪…を足しても。
恐らく、十年以上刑務所に入れられることはない。
それどころか、その半分以下で済むのでは?
「それに、ミルツちゃんのやり方は問題があったけど、言い分は間違ったことは言ってないから、って。充分情状酌量の余地はあるし、こういう分野に得手な弁護士さんをつけてもらうらしい」
なら、もっと刑期は短くなる可能性もあるな。
本人がそれを望むかは分からないが。
師弟揃ってクソ真面目だもんな。「容赦せず、きちんと裁いて欲しい」とか言いそうだもん。
「それ…シュニィの采配か?」
「いいや?『聖魔騎士団魔導部隊隊長として、公平な判断を下しただけです』って」
やっぱりシュニィの采配なんじゃないか。
でも、シュニィは絶対、自分が忖度したとは言わないだろうな。
あいつもあいつで、真面目だしなぁ。
「アトラスはそれで納得してんの?」
シュニィを魔女呼ばわりされたと、随分お冠だったが。
「あぁ、それね…。実はそれ、ミルツちゃんじゃなくて、他の『サンクチュアリ』のメンバーが、シュニィちゃんを魔女だって罵ってたみたいで…」
え。
「取り調べの最中に、シュニィちゃんを『詐欺師』だとか、『魔女』って口走って、それを聞いたアトラス君が暴れて…そりゃもう大変だったそうだよ」
…マジかよ…。
本当に大変だったろうな。
生きてる?その取り調べ受けてた『サンクチュアリ』の人。
「何とかシュニィちゃんが間に入って宥めたらしいけど…。まだまだ怒ってるみたいで、手がつけられないってシュニィちゃんが嘆いてた」
そりゃ嘆くわ。
愛妻家も、度を過ぎると災厄と化すな。
「ともあれ…珠蓮君には、良い報告が出来そうだね」
「そうだな」
ミルツの処遇について、珠蓮は口には出さないものの、心配しているだろうから。
ルーデュニアを出る前に、ある程度教えてやれるのは有り難いことだ。
良い土産になるだろう。珠蓮にとっては。
「あとは…賢者の石の、最後の欠片だけ見つかれば、心置きなく珠蓮を送り出せるんだが…」
「…それは、これのことか?」
「!?」
俺とシルナではない、第三者の声と気配に気づき。
俺も、シルナも、愕然として振り向いた。
すると、そこにいたのは。
「シュニィちゃんから、連絡があったよ」
二人きりになった深夜の学院長室で、シルナはそう切り出した。
「何の?」
「ミルツちゃんの処遇について」
…あぁ。
それについては、穏やかではいられないな。
特に、明朝出発する珠蓮にとっては。
「彼女は、国内の魔導師排斥論者をけしかけて『サンクチュアリ』を扇動し、国内の治安を乱し、聖魔騎士団魔導部隊の大隊長を罠にかけた」
考えてみると、結構ヤバいことしてるよな。
それ以上に、賢者の石の封印を解くというヤバいことをしているが…。
「でも…賢者の石については、裁かれないみたいだ」
「何?」
「賢者の石の封印について、公式に明らかにする訳にはいかない。だから、吐月君達を罠に嵌めたことも…単に、『聖魔騎士団の強制立ち入りを拒否、抵抗した公務執行妨害罪』のみを問われて、それ以上の罪は課せられないそうだよ」
…それは…。
それなら、いくら余罪が…『サンクチュアリ』を扇動して国内の治安を乱した罪…を足しても。
恐らく、十年以上刑務所に入れられることはない。
それどころか、その半分以下で済むのでは?
「それに、ミルツちゃんのやり方は問題があったけど、言い分は間違ったことは言ってないから、って。充分情状酌量の余地はあるし、こういう分野に得手な弁護士さんをつけてもらうらしい」
なら、もっと刑期は短くなる可能性もあるな。
本人がそれを望むかは分からないが。
師弟揃ってクソ真面目だもんな。「容赦せず、きちんと裁いて欲しい」とか言いそうだもん。
「それ…シュニィの采配か?」
「いいや?『聖魔騎士団魔導部隊隊長として、公平な判断を下しただけです』って」
やっぱりシュニィの采配なんじゃないか。
でも、シュニィは絶対、自分が忖度したとは言わないだろうな。
あいつもあいつで、真面目だしなぁ。
「アトラスはそれで納得してんの?」
シュニィを魔女呼ばわりされたと、随分お冠だったが。
「あぁ、それね…。実はそれ、ミルツちゃんじゃなくて、他の『サンクチュアリ』のメンバーが、シュニィちゃんを魔女だって罵ってたみたいで…」
え。
「取り調べの最中に、シュニィちゃんを『詐欺師』だとか、『魔女』って口走って、それを聞いたアトラス君が暴れて…そりゃもう大変だったそうだよ」
…マジかよ…。
本当に大変だったろうな。
生きてる?その取り調べ受けてた『サンクチュアリ』の人。
「何とかシュニィちゃんが間に入って宥めたらしいけど…。まだまだ怒ってるみたいで、手がつけられないってシュニィちゃんが嘆いてた」
そりゃ嘆くわ。
愛妻家も、度を過ぎると災厄と化すな。
「ともあれ…珠蓮君には、良い報告が出来そうだね」
「そうだな」
ミルツの処遇について、珠蓮は口には出さないものの、心配しているだろうから。
ルーデュニアを出る前に、ある程度教えてやれるのは有り難いことだ。
良い土産になるだろう。珠蓮にとっては。
「あとは…賢者の石の、最後の欠片だけ見つかれば、心置きなく珠蓮を送り出せるんだが…」
「…それは、これのことか?」
「!?」
俺とシルナではない、第三者の声と気配に気づき。
俺も、シルナも、愕然として振り向いた。
すると、そこにいたのは。


