「賢者の石が脅威なのは、その使い方を知っている者の手に渡ったときだけだ」
と、珠蓮は言った。
使い方を知っている者…と言えば。
「珠蓮…お前と、それからミルツだけか…」
「そうだ。他の者が賢者の石を所持したところで、それは宝の持ち腐れだ」
まぁ、確かに言われてみればそうだよな。
兵器というのは、その扱い方を知っているから脅威になるのであって。
いくら子供が戦車を盗んでも、動かし方が分からないんじゃ、ただの鉄屑だ。
それと同じで、使い方が分かっていなければ、賢者の石と言えど、ただの石ころ。
そう思えば、少しは気が楽にもなるが…。
「だからって、一生欠けたままって訳にもいかないだろう?」
「そうだな。残りの欠片も揃えなければ。…でも、それはお前達が心配することじゃない」
「…何?」
「賢者の石の最後の欠片は、俺が一人で探そう。これ以上、お前達の手を煩わせるのは忍びない」
…。
…珠蓮…。
「別に急ぐ必要はない。いずれ見つかればそれで良い。お前達には、もう充分協力してもらった。あとは、賢者の石の番人たる俺の仕事だ」
「…遠慮しなくて良いんだぞ。ここまで来たら、もう乗りかかった船だ」
「欠片を十個も集めてもらった。ミルツの居場所を突き止めてもらった。これ以上の親切は、逆に心が痛くなる」
…それは…。
…お前、本当律儀な奴だよな。
そして難儀な奴だよ。素直に頼っとけば良いものを。
「元々は、俺の身から出た錆だ。ミルツのことも…賢者の石の封印が解かれたことも…。だから、最後の尻拭いくらいは…自分でさせてくれ」
「…本当に良いのか?珠蓮…」
「あぁ。お前達には…本当に世話になった。感謝している」
…やっぱり。
やっぱり珠蓮には、この国に留まるという選択肢はないようだな。
俺としては、そうしてくれても良かったんだが。
「珠蓮君…。君さえ良ければ、ずっとこの国にいても良いんだよ。聖魔騎士団に頼んで、君の居場所を作ってもらおう。賢者の石の最後の欠片を見つける為にも、組織に所属した方が、人の手を借りることが出来る」
シルナが、ルーデュニア滞在を勧めた。
シルナはそうすると思ってた。
しかし。
「いや…。これ以上、人の手は借りたくない。そもそも賢者の石の存在は、深く隠されていなければならないものだ」
…だから、自分の手で探す?
「その好意には感謝している。だが…俺に、この国でやることはもうない。明朝には、この国を出て…また、流浪の旅に出ようと思う。残る賢者の石の欠片を探しながら」
…そうか。
引き留めたいところだが…決意は、固そうだな。
「…分かったよ。でも…近くに寄ったら、遊びに来てね?」
「そうだな、また顔を出そう。そのくらいの我儘は許してくれ」
折角、共闘までした仲だ。
このまますっぱり縁切りは、後味が悪い。
不思議な縁によって出会ったのだ。縁があったらまた出会い、縁がなければ離れ、それを繰り返す。
それで充分だ。
「あと、国境まで見送りに行くよ。それくらいは許してくれる?」
「あぁ、勿論だ」
それじゃあ。
珠蓮とも、あと数時間で別れだな。
賢者の石の、最後の欠片が見つかっていれば…後腐れもなかったのだが。
こればかりは、俺達にはどうしようもなかった。
と、珠蓮は言った。
使い方を知っている者…と言えば。
「珠蓮…お前と、それからミルツだけか…」
「そうだ。他の者が賢者の石を所持したところで、それは宝の持ち腐れだ」
まぁ、確かに言われてみればそうだよな。
兵器というのは、その扱い方を知っているから脅威になるのであって。
いくら子供が戦車を盗んでも、動かし方が分からないんじゃ、ただの鉄屑だ。
それと同じで、使い方が分かっていなければ、賢者の石と言えど、ただの石ころ。
そう思えば、少しは気が楽にもなるが…。
「だからって、一生欠けたままって訳にもいかないだろう?」
「そうだな。残りの欠片も揃えなければ。…でも、それはお前達が心配することじゃない」
「…何?」
「賢者の石の最後の欠片は、俺が一人で探そう。これ以上、お前達の手を煩わせるのは忍びない」
…。
…珠蓮…。
「別に急ぐ必要はない。いずれ見つかればそれで良い。お前達には、もう充分協力してもらった。あとは、賢者の石の番人たる俺の仕事だ」
「…遠慮しなくて良いんだぞ。ここまで来たら、もう乗りかかった船だ」
「欠片を十個も集めてもらった。ミルツの居場所を突き止めてもらった。これ以上の親切は、逆に心が痛くなる」
…それは…。
…お前、本当律儀な奴だよな。
そして難儀な奴だよ。素直に頼っとけば良いものを。
「元々は、俺の身から出た錆だ。ミルツのことも…賢者の石の封印が解かれたことも…。だから、最後の尻拭いくらいは…自分でさせてくれ」
「…本当に良いのか?珠蓮…」
「あぁ。お前達には…本当に世話になった。感謝している」
…やっぱり。
やっぱり珠蓮には、この国に留まるという選択肢はないようだな。
俺としては、そうしてくれても良かったんだが。
「珠蓮君…。君さえ良ければ、ずっとこの国にいても良いんだよ。聖魔騎士団に頼んで、君の居場所を作ってもらおう。賢者の石の最後の欠片を見つける為にも、組織に所属した方が、人の手を借りることが出来る」
シルナが、ルーデュニア滞在を勧めた。
シルナはそうすると思ってた。
しかし。
「いや…。これ以上、人の手は借りたくない。そもそも賢者の石の存在は、深く隠されていなければならないものだ」
…だから、自分の手で探す?
「その好意には感謝している。だが…俺に、この国でやることはもうない。明朝には、この国を出て…また、流浪の旅に出ようと思う。残る賢者の石の欠片を探しながら」
…そうか。
引き留めたいところだが…決意は、固そうだな。
「…分かったよ。でも…近くに寄ったら、遊びに来てね?」
「そうだな、また顔を出そう。そのくらいの我儘は許してくれ」
折角、共闘までした仲だ。
このまますっぱり縁切りは、後味が悪い。
不思議な縁によって出会ったのだ。縁があったらまた出会い、縁がなければ離れ、それを繰り返す。
それで充分だ。
「あと、国境まで見送りに行くよ。それくらいは許してくれる?」
「あぁ、勿論だ」
それじゃあ。
珠蓮とも、あと数時間で別れだな。
賢者の石の、最後の欠片が見つかっていれば…後腐れもなかったのだが。
こればかりは、俺達にはどうしようもなかった。


