神殺しのクロノスタシスⅣ

イーニシュフェルト魔導学院に戻り。

俺達は、珠蓮を交えて話をした。

残る最後の欠片について。

「いつの間に、何処の誰が攻略したんだろうね…」

と、呟くシルナ。

本当にな。

聖魔騎士団の誰かなら、隠しておく必要はないだろうし。

そもそも、隠しておく必要がある奴なんて…。

…ん?

「…おい、お前らじゃないだろうな」

「ん?」

「はい?」

そこで、また大人達の話し合いはつまらんとばかりに、将棋を指してる二人組。

令月とすぐりだ。

「お前らもしかして、一回帰ってきてから、またこっそり俺達の目を盗んで、異次元世界に飛び込んだりしてないだろうな?」

そんなことしててみろ。

マジでもう、今度はファラリスの雄牛持ってくるからな。

しかし。

「酷い言い掛かりだね〜。ねー『八千代』」

「うん。僕達良い子だから、二回も異次元世界に飛び込むなんて、そんな悪いことしてないよ」

本当に良い子なんだったらな、そもそも一度でも異次元世界に飛び込まないんだよ。

そして、大人達の話し合いを尻目に、将棋を指したりもしない。

「じゃあ誰だよ…。…ナジュとか?」

「何で僕が槍玉に上げられるんですか…」

「自己犠牲精神が一番大きいのは、お前だからな」

自分死なないんだしいーや、みたいな考えが根底にあるからな。

しかし。

「確かに僕は死ぬ動機がありますが、異次元世界じゃ死ねないし、そもそも賢者の石を隠し持つ理由がないでしょう」

「あ、そうか…」

そうだよな。

令月にしてもすぐりにしても、ナジュにしても。

異次元世界に勝手に飛び込みそうな奴はいても、賢者の石を隠そうとする理由がある奴はいない。

隠して何になるんだ?たった一欠片の石の破片を…。

「困ったね。あと一つなのに…」

と、呟く天音。

これじゃあ、安心して枕を高くして寝られないよな。

すると。

「そんなに心配する必要はない」

珠蓮が、皆を安心させるようなことを言った。

「心配にもなるだろ?」

「心配だったのは、ミルツが賢者の石を隠し持っている可能性だ。他の人間が隠し持つ分には、大して困らない」

…そうか?

いや、でも賢者の石だぞ?

その一欠片で作られた世界に、俺達は揃って四苦八苦させられた訳で。

大して困らないってことはないんじゃないか、と思ったが。