珠蓮は、ミルツを詰ったりはしなかった。
罵ることも、嘲笑うこともなかった。
むしろ、彼は申し訳なさそうに言った。
「お前の気持ちを考えることもなく、俺は自分と同じ価値観をお前に押し付け、それが正しいと思い込んでしまったんだ」
「…」
「お前にはお前の考えがある。正しいか、間違っているかなどどうでも良い。お前の意志を顧みず、俺の価値観を押し付けて…本当に、申し訳ないことをした」
「…!それは…」
まさか謝られるとは思っていなかったらしく。
ミルツは狼狽え、言葉に詰まっていた。
懐が広いとか、そういう次元じゃないもんな。
「お前の考えを、俺は否定しない。誰にも否定など出来ない。誰にもそれぞれ正義がある。そして…お前のその考えは、間違ってはいない。魔導師、非魔導師を問わず、賛同する者はいるはずだ」
…だろうな。
俺達でさえ、一理あると思ってしまったくらいなのだから。
ただルーデュニア聖王国は、特別魔導師に優しい国だから、魔導師排斥論者、というだけで異端に見えるだけで。
国が違えば、ミルツの意見は、革新的なものとして受け入れられてもおかしくはないだろう。
「賢者の石を頼らずとも、その言葉だけで、お前は自分の正当性を認めさせられるはずだ」
俺もそう思う。
この子、間違ったことは言ってない。
むしろ、俺達より遥かに、人々の心に誠実だ。
今回彼女が捕まっているのは、『サンクチュアリ』という組織を扇動し、暴力沙汰の事件を起こしたからで。
普通に魔導師排斥論者として暮らしていく分には、彼女は多くの支持者を集められるであろう思想の持ち主だ。
手段さえ間違えなければ、彼女は尊敬されるべき、崇高な考えを持っている。
他にも、賛同する者はいるだろう。
新しい魔導師の在り方として、彼女の言葉は、充分人々の心に響くものた。
「だから、これからも…お前はお前の、正しいと思う道を進んでくれ。…俺も、そうするから」
「あ…あなたは…」
ミルツは、お人好しな珠蓮を見て、何かを言おうとしたが。
珠蓮は首を振って、それを遮った。
これ以上、言葉は必要ないと思ったのだろう。
珠蓮の中では、もう答えが出ているから。
あと必要なのは、惜別の言葉だけ…。
「…賢者の石を利用する為とはいえ、何千年もの間…俺に付き合ってくれて、ありがとう」
「…」
「罪を償って、ここから出たら…そのときは、またお前の信じる道を歩んでくれ。俺も応援しているから」
珠蓮は、微笑みを浮かべてそう言った。
それが、かつての弟子に向ける、師匠からの最後の言葉だった。
罵ることも、嘲笑うこともなかった。
むしろ、彼は申し訳なさそうに言った。
「お前の気持ちを考えることもなく、俺は自分と同じ価値観をお前に押し付け、それが正しいと思い込んでしまったんだ」
「…」
「お前にはお前の考えがある。正しいか、間違っているかなどどうでも良い。お前の意志を顧みず、俺の価値観を押し付けて…本当に、申し訳ないことをした」
「…!それは…」
まさか謝られるとは思っていなかったらしく。
ミルツは狼狽え、言葉に詰まっていた。
懐が広いとか、そういう次元じゃないもんな。
「お前の考えを、俺は否定しない。誰にも否定など出来ない。誰にもそれぞれ正義がある。そして…お前のその考えは、間違ってはいない。魔導師、非魔導師を問わず、賛同する者はいるはずだ」
…だろうな。
俺達でさえ、一理あると思ってしまったくらいなのだから。
ただルーデュニア聖王国は、特別魔導師に優しい国だから、魔導師排斥論者、というだけで異端に見えるだけで。
国が違えば、ミルツの意見は、革新的なものとして受け入れられてもおかしくはないだろう。
「賢者の石を頼らずとも、その言葉だけで、お前は自分の正当性を認めさせられるはずだ」
俺もそう思う。
この子、間違ったことは言ってない。
むしろ、俺達より遥かに、人々の心に誠実だ。
今回彼女が捕まっているのは、『サンクチュアリ』という組織を扇動し、暴力沙汰の事件を起こしたからで。
普通に魔導師排斥論者として暮らしていく分には、彼女は多くの支持者を集められるであろう思想の持ち主だ。
手段さえ間違えなければ、彼女は尊敬されるべき、崇高な考えを持っている。
他にも、賛同する者はいるだろう。
新しい魔導師の在り方として、彼女の言葉は、充分人々の心に響くものた。
「だから、これからも…お前はお前の、正しいと思う道を進んでくれ。…俺も、そうするから」
「あ…あなたは…」
ミルツは、お人好しな珠蓮を見て、何かを言おうとしたが。
珠蓮は首を振って、それを遮った。
これ以上、言葉は必要ないと思ったのだろう。
珠蓮の中では、もう答えが出ているから。
あと必要なのは、惜別の言葉だけ…。
「…賢者の石を利用する為とはいえ、何千年もの間…俺に付き合ってくれて、ありがとう」
「…」
「罪を償って、ここから出たら…そのときは、またお前の信じる道を歩んでくれ。俺も応援しているから」
珠蓮は、微笑みを浮かべてそう言った。
それが、かつての弟子に向ける、師匠からの最後の言葉だった。


