神殺しのクロノスタシスⅣ

…今、どんな気持ちなんだろうな、珠蓮は。

想像しただけで辛いから、考えないけどさ。

でも、無意識に考えずにはいられない。

今、どれだけ珠蓮が、自分の愚かさとミルツの裏切りに嘆いているか、と。

ミルツの魂胆に気が付かなかった。ミルツの本心を見抜けなかった。

そのせいで、こんな事態を招いてしまった。

神聖な封印は穢され、珠蓮が必死の思いで守ってきた、その日々を侮辱された。

まさかこんな形で、背中から撃たれるとは思ってなかっただろうな。

珠蓮、お前は怒って良い。 

言葉の限りミルツを責め立て、罵倒し、罵って良い。

騙されていた者、裏切られた者として、その権利がある。

しかし。

珠蓮は、それをしなかった。

代わりに。

「お前は、魔導師排斥論者なのか?」

語気を荒らげることもなく、あくまで落ち着いたまま、ミルツに尋ねた。

「魔導師排斥論者という一括に区別されるのは、遺憾ですが…。しかし、魔導師排斥論者であることは事実です」

「いつから?最初からか」

「いいえ、最初からではありません。その素養は持っていたのかもしれませんが、私が魔導師を厭うようになったのは、あなたに師事してからです」

「…」

…それは、つまり。

自分が魔導師排斥論者になったのは、珠蓮のせいだと言いたいのか?