ジュリスの好意によって、鍵をもらった俺達は。
鉄格子の錠を開けて、中に入った。
それほど広い部屋ではない。
ベッドと、椅子と、テーブルと…簡素な家具だけが置かれている、静かな牢獄。
その中でミルツ・シュテインは、『サンクチュアリ』の地下にいたときと同じように、
椅子に座って、落ち着いた様子で、俺達を真っ直ぐに見据えていた。
師である珠蓮を見ても、顔色一つ変えない。
恐怖も、怯えも、戸惑いすらない。
全てを受け入れ、覚悟している顔だった。
来るのは分かっていた、と言わんばかりの態度に、さすがなもんだと思った。
聞くところによると、別の収監施設に捕らえられ、取り調べを受けている、他の『サンクチュアリ』メンバーは。
皆が互いに責任を擦り付けようと、必死で言い訳祭りを開催しているそうな。
「それはあいつが言ったから」、「あいつが提案したから」、「あいつが最初にやり始めたんだ」云々。
小学生でも、もう少しマシな言い訳を考えるっての。
それに対し、このミルツ・シュテインという女は…。
「…お前が、『サンクチュアリ』を扇動したのか?」
「えぇ、そうです」
珠蓮の問いかけに、全く躊躇うことなく頷いた。
言い訳さえしない。
潔いなぁ…。ナジュにも見習わせたい素直さだ。
…だが。
「…賢者の石を使って、か?」
「そうです」
「お前はこの為に、賢者の石の封印を解いたのか。封印を解く方法を知る為に、俺のもとに師事したのか?」
「そうです」
…ここまで、取り付く島もなく肯定されてしまうと。
さすがに切なくなってくるぞ。
そこは、少しでも躊躇って欲しかった。
珠蓮にとっては…。
「…」
あまりにも、ミルツがはっきりと認めるものだから。
珠蓮も、かける言葉を失っていた。
…何を思っているんだろうな、今。
自分が信頼して、長い間愛弟子だと思って、師弟関係を築き上げ。
彼女を信じていたから、自分の後継者にする為に、賢者の石の封印の解き方を教えたのに。
愛弟子だと思っていたミルツは、封印の解き方を知るなり、賢者の石を持って逃げ去り。
あろうことか、『サンクチュアリ』などという魔導師排斥論者達に与し、彼らに賢者の石を渡した。
二人の信頼関係は、偽りで成り立ったものでしかなかった。
ミルツは、『サンクチュアリ』に脅されていたのでも、利用されていたのでもない。
むしろ、逆だ。
ミルツが、『サンクチュアリ』を利用し、そして珠蓮を利用したのだ…。
鉄格子の錠を開けて、中に入った。
それほど広い部屋ではない。
ベッドと、椅子と、テーブルと…簡素な家具だけが置かれている、静かな牢獄。
その中でミルツ・シュテインは、『サンクチュアリ』の地下にいたときと同じように、
椅子に座って、落ち着いた様子で、俺達を真っ直ぐに見据えていた。
師である珠蓮を見ても、顔色一つ変えない。
恐怖も、怯えも、戸惑いすらない。
全てを受け入れ、覚悟している顔だった。
来るのは分かっていた、と言わんばかりの態度に、さすがなもんだと思った。
聞くところによると、別の収監施設に捕らえられ、取り調べを受けている、他の『サンクチュアリ』メンバーは。
皆が互いに責任を擦り付けようと、必死で言い訳祭りを開催しているそうな。
「それはあいつが言ったから」、「あいつが提案したから」、「あいつが最初にやり始めたんだ」云々。
小学生でも、もう少しマシな言い訳を考えるっての。
それに対し、このミルツ・シュテインという女は…。
「…お前が、『サンクチュアリ』を扇動したのか?」
「えぇ、そうです」
珠蓮の問いかけに、全く躊躇うことなく頷いた。
言い訳さえしない。
潔いなぁ…。ナジュにも見習わせたい素直さだ。
…だが。
「…賢者の石を使って、か?」
「そうです」
「お前はこの為に、賢者の石の封印を解いたのか。封印を解く方法を知る為に、俺のもとに師事したのか?」
「そうです」
…ここまで、取り付く島もなく肯定されてしまうと。
さすがに切なくなってくるぞ。
そこは、少しでも躊躇って欲しかった。
珠蓮にとっては…。
「…」
あまりにも、ミルツがはっきりと認めるものだから。
珠蓮も、かける言葉を失っていた。
…何を思っているんだろうな、今。
自分が信頼して、長い間愛弟子だと思って、師弟関係を築き上げ。
彼女を信じていたから、自分の後継者にする為に、賢者の石の封印の解き方を教えたのに。
愛弟子だと思っていたミルツは、封印の解き方を知るなり、賢者の石を持って逃げ去り。
あろうことか、『サンクチュアリ』などという魔導師排斥論者達に与し、彼らに賢者の石を渡した。
二人の信頼関係は、偽りで成り立ったものでしかなかった。
ミルツは、『サンクチュアリ』に脅されていたのでも、利用されていたのでもない。
むしろ、逆だ。
ミルツが、『サンクチュアリ』を利用し、そして珠蓮を利用したのだ…。


