神殺しのクロノスタシスⅣ

「ごめんね、ジュリス君…。そこを何とか、頼めないかな」

シルナが、ここぞとばかりに拝み込んだ。
 
「血の繋がりはないとはいえ、ミルツちゃんは、珠蓮君は親族みたいなものだし…」

何千年も師弟関係だったんだろう?

なら、もう親族と呼んでも差し支えない。

例え、お互いがお互いをどう思っていようとな。

「…見なかったことにしてくれないかな?シュニィちゃんも、事情は知ってるはずから…」

「…はいはい、分かったよ」

ジュリスは、溜め息混じりに両手を上げ、降参した。

そして、鉄格子の鍵をこちらに放った。

「俺は何も見なかった。ベリクリーデもな。だから、あとは好きにしろよ」

「…ごめんね、恩に着るよ」

見張り番を、この二人にしてくれたのは…シュニィの配慮かもな。

魔導部隊大隊長以外の魔導師だったら、ここで入れる、入れないの押し問答になりかねなかったし。

ジュリスのお陰で、安心して入ることが出来る。

…が。

「…?ジュリス、私は目、見えてるよ?」 

よく意味を理解していないらしいベリクリーデである。

「知ってるよ。この三人を中に入れたことを黙ってる、って意味で、『見なかったことにする』って言うんだ」

「?それ、悪いことなんじゃないの?だってここは誰も入れちゃ駄目だって」

「いや、まぁ悪いことなんだけど。ちょっと見逃してやれよ」

「これバレたら、ジュリス、首飛ぶ?飛ばされるの?」

「恐ろしいことを言うな」

「じゃあ、今度私が何か悪いことをしちゃったときも、見逃してね」

「何でそうなるんだよ。お前は駄目に決まってるだろうが」

「えー…。不公平だ」

「良いか。お前のはな、毎回、笑って見逃せるほど可愛いレベルじゃないんだ」

…本当ごめんなジュリス。マジで。

バレても、首は飛ばされないよう口裏合わせとくから。安心してくれ。