神殺しのクロノスタシスⅣ

『サンクチュアリ』解散のニュースが、国内に報道された、その翌日。

俺とシルナはこの日、寿木珠蓮と共に、聖魔騎士団にある拘置所に向かった。

そこは一般の拘置所とは違って、魔導師専用の拘置所である。

一般人なら、鍵付きの檻に入れられると、それだけで脱出は不可能になるが。

魔導師なら、鉄格子で囲われたくらい、障害にも何にもならない。

よって、魔導師を拘束する場合は、聖魔騎士団が警護を務める、魔導師専用の拘置所に送られることになる。

ここで収容される者は、鉄格子に囲われてはいるが。

更に、牢の出入り口で、必ず複数名の魔導師が見張りをしている。

普段は、聖魔騎士団魔導部隊所属の魔導師が数名、交代で見張りに立っているだけだが。

今回の「お客様」には、特別な見張りが必要だ。

その点はシュニィが抜かりなく用意している、とのことだったが…。

鉄格子が近づくにつれ、見張り番の声が聞こえてきた。

「ほら、これで星になるだろ?」

「おぉー、凄い凄い。ジュリス器用だねー」

「お前が下手くそ過ぎるんだよ…」

「私にも出来るよ」

「ほう?じゃあやってみろよ、さっき教えた蝶々」

「うん。えーと、まずは親指に紐をかけて…小指に回して…」

「おい待て違う。それ人差し指。お前自分の指の区別ついてるか?」

「それから左手で小指の紐と…もう一本小指を取ってー」

「中指だ中指。お前小指何本あるんだよ?」

「くるっと回すとかんせ、…あれ?」

「…」

「…蝶々出来た」

「…出来てねぇじゃん…」

聞こえていた声の主は、勿論。

聖魔騎士団魔導部隊大隊長の、ジュリスとベリクリーデであった。

で、さっきから二人が何をやっていたのかと言うと、それは二人の手元を見れば一目瞭然。

あやとりである。

蝶々を作ったと言うベリクリーデだが、ただのぐちゃぐちゃになった紐でしかない。

あれを蝶々と呼ぶには、かなり無理があるぞ。

しかも。

「あ、見てほら、窓。本物の蝶々だ〜」

「あ、こら待て!勝手に持ち場を離れんなって!ったく、五分とじっとしてねぇんだからこいつは!」

ふらふらと歩き出すベリクリーデを、急いで止めるジュリスである。

…うん。

「相変わらず、苦労してんな…ジュリス」

まぁ、二人共見張り番をするには、充分過ぎる戦力だけどさ。

ちょっと、ベリクリーデの性格に難があり過ぎるぞ。