「え?賢者の石の欠片が足りない?」

「あぁ」

聖魔騎士団に、珠蓮のことを話し。

再び、イーニシュフェルト魔導学院に戻ってきて。

早速、バラバラになっていた賢者の石の欠片を一つに戻そう…としたところ。

珠蓮から、衝撃の事実が知らされた。

なんと、石の欠片が足りないと言うのだ。

「ちゃんと欠片は十個あるのに…何で…」

俺が呆然とそう呟いても、事実は変わらない。

この中で唯一、賢者の石の魔力を扱える珠蓮が、バラバラにされた欠片を一つに「修復」したが。

現れたのは、まるで猫に一口齧られたかのような、一部が凹んだ水晶玉。

欠片のときに比べると、一回りも二回りも大きくなっているけれど。

それだけに、凹んで欠けた部分が目立つ。

「シルナ!欠片は十個じゃなかったのか?」

「え?あ、ご、ごめん。十個じゃなかったみたいだね。私も憶測だったから…」

どうやら、シルナの見通しは甘かったらしいな。

「全くこれだから…老人の言うことは当てにならないんです」

イレースにもチクチク言われてる。

半泣きのシルナである。

それはともかく。

「つまり、あと一つ、賢者の石の欠片が何処かにあるってことか…」

「じゃあ、また異次元世界に行くの?」

と、尋ねる令月。

「僕、もう一回行っても良いよ」

「やだよ。俺が行く。あの世界のやり口はもう分かったから、次はスマートに帰ってくるよ」

張り合う元暗殺者組。

お前らな。

「馬鹿言うんじゃない。勝手に異次元世界に飛び込んで、帰ってきてから拷問されたこと、もう忘れたのか」

「え?うん」

もう一回やろうか?

駄目だ。こいつらの中では、逆さ吊りにする程度、拷問のうちにカウントされてない。

「勝手に行かなきゃいーんでしょ?今度は、ちゃんと宣告してから行くよ」

そういう意味じゃないんだよ。

宣告してから行くなら良い、なんて一言も言ってない。

宣告しても駄目に決まってるだろ。

「とにかくお前らは駄目だ。行くなら、俺達大人が行く」

もう一度、あの摩訶不思議なくそったれ世界に行くと思うと、気は進まないが。

それが賢者の石を取り戻す為なら…。

何より、他の誰かを行かせるより、自分が行った方がマシだ。

「…議論しているところ悪いが」

と、珠蓮が口を挟んだ。

「異次元世界は、もう存在しないぞ」

…何だと?