さて、学院長室に残ったのは、俺とシルナの二人だけ。

そして、ナジュに重大な任務を託された俺は、その役割を果たさなければならない。

「…シルナ」

「…何?」

「お前、また『何でもかんでも自分のせい病』を発病してるだろ」

「…」

シルナは、驚いたように目を見開いて。

そして、観念したらしく苦笑を溢した。

やはりな。

ナジュが察したのは、それだったか。

全く、お前の治らない持病だよ。

認知症より酷い。

「言っとくが、今回の件は、完全にお前の責任じゃないぞ」

お前という奴は相変わらず、何でもかんでも自分のせいにしないと気が済まないようだが。

今回の件「は」、じゃなくて、今回の件「も」だ。

『サンクチュアリ』とやらが発足したのも、賢者の石の封印が解かれたのも、そのせいで、合計九人の人間が異次元世界に飛ばされたのも。

断じて、シルナに責任があったからではない。

なまじ、事件の渦中にある賢者の石が、自分も開発に携わっていたもんだから。

あぁ、私がこんなものを作らなければ。イーニシュフェルトの里が、こんな研究をしなければと、色々小難しく考えていたんだろう。

だからこそ、そんなシルナの心境を読心魔法で読んだナジュが、俺に忠告したのだ。

シルナが、また一人で抱え込んでウジウジしてるようだから、慰めてやれ、ってな。

全く手間のかかる奴だよ。

何でも自分のせいにしやがってさ。

「賢者の石の発案者はお前か?違うだろう」

「発案者…最初の発案者は、里の長老の一人で…族長の側近だった者が…」

ほら見ろ。シルナ関係ねぇ。

大方、その族長側近の発案に、シルナも手伝え、とお鉢が回ってきたんだろう。

「だったら、賢者の石がこの世に生まれたのは、お前のせいじゃない」

「…」

例えお前が拒否したとしても、他の賢者達が完成させていただろうよ。

そして。

「封印の在処だって、お前は教えられなかったんだろう?」

族長とやらが直々に、自分の友人に託したのだ。

故に、シルナの預かり知るところではなかったはずだ。

むしろ、シルナは万一賢者の石の封印が解かれ、良からぬ者の手に渡ったときの為に、流言を流して保険をかけておいたのだ。

お陰で、悪用されていた賢者の石の欠片は、こうして俺達の手にある。

よくやったじゃないか。

これら全部、シルナの功績だ。

褒められこそすれ、責められるようなことは、何もしていない。