神殺しのクロノスタシスⅣ

しばし、一同が沈黙し。

パチ、パチ、と二人が将棋を打つ音だけが、室内に響いた。

そして。

「はぁ。まぁ、そいつらの言う通りではあるな」

沈黙を破ってそう言ったのは、ジュリスだった。

「ここで憶測ばかり重ねても仕方ない。とりあえず、現時点で分かることは共有したんだ。これ以上話し合っても、出てくる結論はない」

「…そうだね」

悔しいが、令月達の言う通りだ。

しかし。

「ですが…その謎の男が、また賢者の石を狙って、学院を攻めてきたら…」

「そのときは、僕と『八千歳』で捕まえるよ」

「罠を張って待ち伏せするのは、俺達の特技だもんね〜」

シュニィの問いに、令月達が物騒な返答。

お前らの罠は、マジで洒落にならん奴だからやめろ。

「まぁ、そんなに心配するな、シュニィ」

「…羽久さん…」

確かに、そいつが賢者の石を狙ってるなら、恐らくまた、俺達の前に現れるだろう。

でも、それは好機だ。

「最初に会ったときは、俺もシルナも、魔力をほぼ使い果たした状態だったから苦戦したが…。今は、万全の状態だ」

あのとき失った魔力は、ほぼ戻っている。

今挑んでこられたら、それは望むところというものだ。

それに。

「学院に攻めてくるなら、我々もいますからね」

と、ナジュが言った。

そう。あの会議室とは違って、我がイーニシュフェルト魔導学院には、頼れる教師陣がいる。

ナジュもいるし、イレースも天音もいる。

ついでに、そこで賭け将棋してる二人もな。

いくら賢者の石が強大な力を持っていようと、この強固な鉄壁を崩れる相手がいるとは、とても思えない。

「そうだね。私達なら大丈夫だよ、シュニィちゃん」

シルナも、落ち着いた声音でシュニィを励ました。

すると、シュニィは視線を彷徨わせ、言いにくそうに口を開いた。

「…それでも…その…生徒を、人質にされたら…」

…あぁ、成程。

シュニィが心配しているのは、それか。

いくら俺達が強力でも、生徒を人質にされれば、手も足も出せないのではないか。

そう危惧しているのか。

確かに、生徒を人質にされたら困るな。

…でも。

「大丈夫だ、シュニィ。心配するな」

『アメノミコト』のとき、散々経験したからな。

「敵が一人なら、いくら生徒を人質を取られても、どうとでもするよ」

「…そう、ですか…」

攻めてきたいなら、そうすれば良い。

迎え撃つまでのことだ。

そして、何故奴が賢者の石を集めているのかも、ついでに尋ねておこう。

「…分かりました。でも…何かあったら、すぐ聖魔騎士団を呼んでくださいね。いつでも、すぐに駆けつけますから」

心配性のシュニィは、そう念押しした。

「あぁ。いつも悪いな」

「いいえ。お願いですから、ちゃんと頼ってくださいね」

はいはい。

「じゃ…今日のところは、これでお開きにしようか」

と、いうシルナの一言で。

気の沈む会議は、おしまいとなった。