神殺しのクロノスタシスⅣ

分からないことが多過ぎる。情報が足りない。

どう判断したら良いのか分からない。

これは…暗礁に乗り上げたか、と。

思っていたら。

「はい、王手」

「あ、ちょい待って。一手戻って一手。やり直し」

「え。僕の勝ちだったのに」

「もっかい。もっかいチャンス頂戴」

「良いよ」

…。

なんか、呑気な声がすると思って振り向くと。

令月とすぐりの二人は、眉間に皺を寄せる大人達とは裏腹に。

床に腰を下ろして、将棋盤を囲んでいた。

…何をやってるんだ、こいつらは。

自分達から会議に参加しておきながら、全然発言しないなーと思っていたら。

あろうことか、将棋やってる。

「おい、お前ら」

「ちょっと、気を散らさないでよ。今考えてるんだからさ」

この野郎。

「呑気に将棋して遊んでる場合かよ!」

「呑気じゃないよ。明日の畑の水やり係を賭けて戦ってるんだから」

賭け将棋かよ。余計やめろ。

「お前ら、今の状況分かってるのか?」

賭け将棋なんかやってる場合じゃないことくらい、分かるだろ。

もっと真剣になれ。真剣に。

すると。

「なんか大人達が、難しー話してるからさー」

「うん。正直僕には、よく分からないよ」

「何で大人って、話を面倒臭くするんだろーね?その謎の男は、石を狙ってるんでしょ?だったら、放っておいても勝手に向こうから来るでしょ」

「そこを罠張って捕まえて、事情を聞けば一発で解決するのに。賢者の石の力だの封印だの、そんなのどうでも良いよね」

「全くだよ。こんな分からないことだらけなのに、何だかんだ理屈つけて、憶測ばっか重ねてさー」

「時間の無駄だよね。どんなに頑張って考えたって、真実は一つしかないのに」

「そんなつまんないことしてる暇あったら、将棋でもしてた方がいーよね」

「うん。同じ頭を使うなら、こっちの方が良いよね」

…。

…なぁ。

俺達、さっきまで凄い真剣に話し合ってたんだけど。

子供達に冷静にぶった切られて、かなりショックなんだけど?