神殺しのクロノスタシスⅣ

まぁ、そりゃそうだわな。

あいつは、明らかに俺達を敵とみなし、攻撃してきたんだから。

封印の秘密云々を無視しても、少なくともあいつは敵だ。

「謎の男ですか…。確かに、彼については分からないことが多いですね」

と、シュニィは難しい顔で言った。

「どうやら、賢者の石を集めているようでしたが…」

「恐らく、それが奴の目的なんだろう。賢者の石を集めて、利用することが」

俺はそう答えた。

でなきゃ、俺達が持ち帰ったばかりの賢者の石を、横から掠め取っていくはずがない。

「ってことは…その謎の男は、『サンクチュアリ』の関係者なんでしょうか?」

「その可能性は高いな」

天音の問いに、俺は頷いた。

元々賢者の石を使って、良からぬことを考えていた『サンクチュアリ』。

そして、賢者の石を回収して回っている謎の男。

この両者が結びつくのは、当然の道理というものだ。

「なら、その謎の男が、イーサ・デルムトなる人物を拐かし、封印の在処を吐かせて…賢者の石を持ち出したと考えるべきでしょうか」

「…現状、それが一番現実的な仮定になるね」

シルナはそう言った。そう言った…けれど。

何処か、腑に落ちなさそうな表情だ。

「…自信がなさそうだな。何か、納得出来ない理由でもあるのか?」

「…それは…」

「ここまで来たら、いっそ全部ぶち撒けろよ。もう一蓮托生だろ、俺達は」

…更に。

「僕はもう、心読んで知ってるんで。あなたが言わないなら僕が言いますけど」

「…ナジュ君…」

情け容赦のない奴が、ここにももう一人。

な?ナジュにぶち撒けられるくらいなら、今のうちに、隠さずに言っとけよ。

黙ってても、どうせバラされるんだから。

「分かったよ…隠さずに言うよ」

と、シルナは苦笑した。

「優秀」な仲間に恵まれて、お前は幸せ者だな、シルナ。 

「私はね…私個人は、謎の彼が全ての元凶だとは、考えてないんだよ」

…今更、何を言われても驚きはしないと思ってたが。

これはまた、急転直下だな。