神殺しのクロノスタシスⅣ

でも、事実として封印は解かれた。

シルナでさえ知らない、封印の解き方を…知っている者がいたのだ。

そいつが封印を解いた。だから、賢者の石がこの世に現れた。

誰なのかは知らないが…余計なことをしてくれたものだ。

「そもそも…封印は、いつ施されたんですか?賢者の石が完成するまでは、封印なんてしてなかったんですよね?」

天音が、そう尋ねた。

「そう。賢者の石を含め…里で研究されていた魔法道具は全て、あのときに…厳重に封印された」

「あのとき、って…」

シルナは僅かに目を伏せて、そして言った。

「…私が神殺しの魔法を使って…イーニシュフェルトの里が崩壊したとき、だよ」

…。

…そう、か。

そうだよな。

研究する者が、皆いなくなってしまったのだから。

悪いことを聞いてしまった。

「里がなくなるに当たって、研究していた魔法道具は、全て長老達が封印した。賢者の石もそうだ」

「…その封印の在処を、お前は知らされてなかったってことか。シルナ…」

「そうだね。場所は知らない…。知っていたところで、解除法は知らないから、場所だけ知っていても仕方ないけどね」

金庫の場所が分かっても、ダイヤルナンバーが分からないのだから意味がない。

…それで、問題なのは。

「学院長先生でさえ知らない封印の解き方を、何故、『サンクチュアリ』が知っていたんでしょう…?」

シュニィが、俺の疑問を代わりに口にしてくれた。

そこだな。気になるのは。

そもそも。

「あなたが知らないなら、封印の解き方を知っていたのは誰です?何か、書物にでも記しているんですか」

と、イレースが尋ねた。

イーニシュフェルトの里唯一の生き残りであるシルナが、封印の解き方を知らないのに。

『サンクチュアリ』は封印を解き、賢者の石を世に出した。

つまり、封印の解き方を知っている者が、何処かにいるのだ。

そいつは誰だ?どうやって、封印の解き方を知った?

「いや、書物には書かれていない。封印の解き方は口伝えでしか伝わってないよ」

「じゃあ、最初にその解き方を教えられたのは誰です?」

「魔導師だよ。でも、里の人間じゃない」

…里の人間じゃない、だと?

俺は、思わず耳を疑った。