神殺しのクロノスタシスⅣ

「…でも、流言を流していたとはいえ…それは、あくまでも万が一に備える為。本当に賢者の石の封印が解かれるとは思ってなかった」

シルナは、率直にそう認めた。

「噂は偽物だけど、封印は本物だったから。そしてあの封印は、常人が解けるものじゃない」

…。

…シルナが、イーニシュフェルトの賢者であるシルナが、こう言うんだからな。

しかも、こんなに真剣な顔つきで。

本当に、封印は相当厳重なものだったんだろう。

「ちなみに、その封印が目の前にあったとして」

俺は試しに、そう提案してみた。

「この中で、その封印を解ける奴は、何人いる?」

多分、俺は無理だろうな。

精々シルナか、器用なシュニィとジュリスが…。

と、思った俺は、甘かった。

「ゼロだね」

「え…!」

断言したシルナに、俺達は驚愕に目を見開いた。

…それは悪い冗談だぞ、シルナ。

この場にいるのは、シルナを始め、シュニィやジュリス、イーニシュフェルト魔導学院の教師陣と、学院でも頭一つ…いや、頭十個は抜けている優秀な生徒達だ。

そんな、ルーデュニア聖王国屈指の魔導師達が集まっているのに。

それでも、封印を解ける者はいないって言うのか?