――――――…次に、気がついたときには。





僕は、魔法陣があったはずの、『サンクチュアリ』の本拠地ビルの会議室の床で、大の字に寝そべっていた。

片手に、何か石みたいなものを握っていた。

…。

…あれ。

「僕…帰ってきたの…?」

「…帰ってきたみたいだねー」

ふと、聞き覚えのある声がして。

首を横に向けると、そこには『八千歳』が、僕と同じく大の字に寝ていた。

『八千歳』もまた、片手に石みたいなものを握っていた。

「『八千歳』…お帰り…」

「そっちこそ、お帰り…」

「僕の方が早かったよ、ちょっと…」

「いーや。俺の方が早かったね…」

どっちだろう。凄い僅差だ。

多分同時。残念ながら、勝負は引き分けのようだ。

それより。

「…どうだった?『八千歳』…」

「何がー…?」

「異次元世界…」

「そりゃもー…クソみたいな世界だったよ。二度と行きたくないね…」

そうなんだ。

「僕も一緒だよ…。二度と行きたくない…」

「って言うかさー…ここ、戻ってきたんだよね…?」

怖いこと聞くね、『八千歳』…。

ここがもとの世界じゃなかったら、僕達は大変だ。

「まだ異次元世界だったりしたら、嫌だよねー…」

「うん…。僕、もう魔力すっからかんなんだよ…」

「あはは、ださー…」

「『八千歳』は、元気なの…?」

「実は、さっきから魔力すっからかんでさー…。死にそー…」

「そっか…。ダサいね…」

魔力すっからかんのダサい者同士だ。

でも。

「今もう一回、異次元世界に行っても…大丈夫な気がしてきた」

「奇遇だねー…。俺も、大丈夫だと思ってるよ…」

だよね。

だって、さっきまでは僕、一人だけだったけど。

今は、二人だから。

魔力すっからかんのダサい者同士でも、僕と『八千歳』なら…。



そこがどんな世界でも、僕達は大丈夫だ。