神殺しのクロノスタシスⅣ

「び、び、びっくりした…。チョコ落としちゃったよ…」

学院長は、床に落としたチョコレートを拾っていた。

学院長のチョコ好きは、異次元世界でも変わらないらしいね。

まー、俺も世界が変わっても、ツキナが可愛いのは共通してるもんなー。

「お前…。窓から入ってくるなよ」

学院長の隣にいた羽久せんせーが、眉をひそめて言った。

いやー、非常時だったもんで。

非常時じゃなくても、窓から入るけどね。

で、それはともかく。

「ナジュせんせーは何処にいるの?」

一晩、『玉響』の隣で眠れない夜を過ごし。

色々考えたことがある。

どうやらこの世界では、いくら俺が正しいことを言っても、信じてもらえなさそうな感じだし。

俺がアホなこと言ってる人扱いされるもんね。

アホなこと言ってるのはそっちだっての。

でも、俺が本当のことを言ってるって、分かってくれる人がいる。

それが、ナジュせんせーだ。

読心魔法使いのナジュせんせーなら、俺が本当のことを言ってるって分かってくれる。

まー、分かってくれたとしても、「すぐりさん、変な洗脳にかかってるみたいですね」とか言われるかもしれないけど。

それはそれで良い。

とにかく、この世界を作った誰かさんの手のひらの上から出るのが重要。

今のところ、手のひらでころっころ転がされてるもんなー。

それを避ける為にも、少なくとも俺が真実を語っていることを知ってもらえる、すなわち協力者が欲しい。

ナジュせんせーはその点、仲間に出来たらすごーく心強い…のだが。

「え?ナジュ君なら、まだ研修中だよ」

「…けんしゅー?」

「そう、前にも言わなかったっけ?魔導教育委員会が企画した、研修合宿。各魔導学院から一人ずつ教師を出して、参加してもらうの」

…。

「…それ、いつ帰ってくるの?」

「一昨日行ったばかりだから、戻ってくるのは…今月の下旬かな?」

はー、あの人つっかえ…。

…まー、何となく分かってはいたよ。

この世界で、ナジュせんせーは「都合が悪い」存在だもんね。

俺が真実を語っていることがバレてしまう。

だから多分どの世界でも、ナジュせんせーは俺の前に姿を現さない。

何だかんだ理由をつけられて、ナジュせんせーに会えることはないんだろう。

…仕方ない。

ナジュせんせーに協力してもらう作戦は、断念ってことで。