神殺しのクロノスタシスⅣ

とにかく今夜は学生寮に帰って、これからどうするか、ゆっくり考えてみよう。

…とか、思っていた俺は浅はかだった。

この世界は、俺を甘やかすつもりはないらしかった。

…と言うのも。

「びっくりしましたね、まさか鍬が飛んでくるなんて…。しかもそれがぶつかるとは」

「…」

「今夜はゆっくり休みましょう。…あ、何かして欲しいことあったら、言ってくださいね」

「…」

じゃあ、君はまずこの部屋から出てってくれないかなー。

と、思わず言いそうになって、踏み留まった自分を褒めたい。

ここは、学生寮の自室。

そしてここにいるのは、俺と…偽『玉響』。

まさか…ルームメイトだったとは。

当たり前のように学生寮までついてきて、そして当たり前のように同室に入るとは。

もとの俺のルームメイトは、何処に行ったんだよ?

ゆっくり考え事を…と思っても、これじゃあ無理だよ。

図ったみたいなシチュエーションだ。

実際図ってるんだろーけど?

でなきゃ、部屋割りまで同じとか有り得ないし。

『八千代』だけ一人ぼっちみたいになってるじゃん。

「はい、ゴザ敷きましたよ」

「…どーも…」

ご丁寧に、『玉響』は俺の寝床(ゴザ)を、床に敷いてくれた。

ちゃっかり、自分の分も隣に敷いてる。

横で寝るの?一緒に?二人で?朝まで?

…じょーだんキツイよマジでさぁ…。

こんなの、気が散ってしょうがないじゃん。

わざわざ『玉響』と同室なのは、夜間に俺が学院を脱走するのを防ぐ為なのかもしれない、と思った。

俺が窓から逃げ出そうとしたら、絶対『玉響』が気づいて、「どうしたの何処に行くの?」って聞くだろうし。

お前はこの檻の中で、大人しく偽物の世界に囚われてろ、ってこと?

…最ッ低…趣味悪いよ。嫌われるよこんな世界ばっか作ってたら。

しかし、俺でさえこの始末なんだもんなぁ。

現実世界で、一緒に魔法陣に飛び込んだ『八千代』は、無事だろうか?

多分俺に負けず劣らず、酷い世界に飛ばされてるんだろーな。

絶対俺が先に帰ろう。

その為には、この偽『玉響』をどうにかしなきゃならない。