神殺しのクロノスタシスⅣ

よく分かったよ。

この異次元世界は、どうしても、どー…しても、『玉響』を蘇らせたいらしい。

俺がいくら、『玉響』が生きている矛盾を、「修正」しようとしたって。

天音せんせーも、ツキナも、『八千代』も、学院長も羽久せんせーも皆。

『玉響』が生きてる世界を、当たり前だと思っている。

ここは、そういう世界なんだ。

誰かが止めるんだ。俺が『玉響』を殺そうとしても。

さっき、『八千代』が俺を止めたみたいに。

そして俺が意識を失って、次に目が覚めたときは。

また新たにリセットされて、当たり前のように『玉響』が蘇って、普通に生きている。

そんな世界を繰り返す。

成程ねー…。異次元世界ってこんななのかー。

結構エグいことしてくれんじゃん。

医務室のベットに横たわって、俺はぼんやりと天井を見上げた。

…多分、俺が今本当のことを…「実はここは、魔封じの石によって作られた異次元世界で、本当の世界では『玉響』は死んでるんだよ」と言ったとして。

まー、絶対、信じてもらえる訳ないよね。

鍬が頭を直撃して、記憶が馬鹿になったんだと思われるのがオチだろーね。

記憶が馬鹿になってるのはそっちだよ。

俺は、確かに覚えている。

この手に、感触が残っている。

…『玉響』の首を、切り落としたときの感触が。

…すると。

「すぐりく〜ん…」

「『八千歳』さん」

「『八千歳』、元気になった?」

「…」

ツキナ、『玉響』、『八千代』の三人が、医務室を訪ねてきた。

…ふっつーの顔してさぁ…死体が…。

「すぐり君、痛い?頭おかしくなってない?」

ツキナが、申し訳無さそうな顔で俺に聞いた。

くっそー…。偽物だと分かっててもツキナは可愛いな…。

ズルい。ズルいぞ。

「だいじょーぶだよ、ツキナ」

確か俺、ツキナのふっ飛ばした鍬で、頭ぶん殴られたんだっけ。

まー良いよ可愛いから、ツキナは。

許す。

「良かったです。ぶつかったとき、物凄い音してましたから…どうなることかと」

しかし偽『玉響』。お前は駄目だ。

お前は許さない。

普通の顔して喋りやがって…偽物の癖に何様だ。

「どうする?今夜は。医務室に泊まる?学生寮に帰る?」

と、尋ねる天音せんせー。

天音せんせーもさぁ…気づいてよ、思い出してよ…。『玉響』は死んだでしょ。

でもこの世界の天音せんせーは、そんなことにも全然気づいてない。

…事情、説明しても無駄なんだろーね。

だったら、医務室にいてもしょうがないや。

「学生寮に帰るよ」

「そう?…無茶しないでね」

魔法陣に飛び込んだ時点で、相当無茶してるよ。

これが本物の天音せんせーだったら、怒るだろーな…。

ま、これは偽物だから良いけど。

俺はそう納得して、ベッドから降りた。

「じゃー、学生寮に帰るよ」

「うぅ…。すぐり君本当ごめんね〜っ!」

「…もういーよツキナ…」

この偽者の世界の、唯一の良いところは。

相変わらずツキナがお馬鹿で、可愛いところだな。