神殺しのクロノスタシスⅣ

突如として、場面が変わった。

愉快な音楽を流すテーマパークから、悲壮な音楽が流れる場所。

…ここは、お葬式をする場所だ。

すぐに分かった。

周囲にいる人は皆、黒い喪服姿で。

数珠を手にして、沈鬱な面持ちで、花に囲まれた棺桶を見つめていた。

目に涙を浮かべている人さえいた。

そして。

その棺桶に縋り付くようにして、泣いている人がいた。

「あぁっ…あなた…あなた…!どうして…!嘘よ、どうしてこんなことに…!」

「…」

泣きじゃくっているのは、さっきまで笑顔で夕焼けを見つめていた、母親(仮)だった。

棺の中で冷たくなっているのは、さっきまで「今日は良い一日だ」と笑っていた、父親(仮)だった。

更に、棺はもう一つ。

父親に並ぶようにして、一回り小さな棺があった。

子供用の棺。

その中に眠っているのは、僕だった。

マネキン人形の、偽物の僕が眠っていた。

そしてそれを見ている本物の僕は、いつもの仕事着。

黒装束だった。

手には、使い慣れた小太刀を。

血の滴る小太刀を、握っていた。

…あぁ、そっか。

僕が殺したんだ。

この人達は、この親子は…僕がかつて、殺した人なんだ…。

僕が、淡々とこなし、罪悪感の一つも感じなかった、この「仕事」の裏で。

こんなにも嘆き、苦しみ。

突如として、幸福な日々を理不尽に奪われて。

泣いている人がいたんだってことを、僕に知らしめたかったんだ。

お前が、あの家の幸福を奪ったんだって…。

お前が、この幸せな親子を殺したせいで、残された母親は一生苦しみ続けなければならないんだって…。

…そう、教えたかったんだね。僕に。

一度だって、罪悪感を感じたことのない僕に。

…。

「…これを見せれば、僕が反省すると思ったの?」

僕は、姿を見せない誰かに向かって言った。

この世界を僕に見せた誰かに。

「自分の過去の過ちを悔いて、反省して懺悔して許しを請うて…罪悪感に押し潰されて、自殺するとでも思ったの?」

…普通の人なら、そうなんだろう。

これが普通の感性を持ち合わせた人なら、確かにそうするんだろう。

自分の犯した罪に耐えられず、心で許しを請うのだろう。

…でも。

僕は、暗殺者だから。