…僕は小一時間ほどかけて、屋敷の中を隅々まで探し回った。
野ネズミのように、屋根裏にまで侵入した。
敷地内に蔵まであったので、そこも鍵を開けて乗り込んできた。
何があるのかと思ったが、古い骨董品みたいなものがコレクションされていただけだった。
父親(仮)の趣味だろうか?
それよりも。
この屋敷を一周して、分かったことは。
あの父親(仮)は…と言うか、この家の人間は、代々。
かなり、家族意識が強い人柄のようだ。
結婚して十年目でようやく生まれた僕を、あれほど可愛がっていた訳だ。
屋敷の中で一番広い居間には、この家代々の当主の写真が、並んで飾ってあった。
随分古い写真から残っている。
写真どころか、最初の数人は肖像画だった。
成程、それで僕の写真も撮りまくっていたんだろう。
そう、写真。
この家は、どの部屋にも必ずと言って良いほど、写真立てが置いてある。
写真立てに入っている写真は、どれも僕が写っている。
赤ん坊の僕、二、三歳のときの僕、五、六歳の頃の僕、十歳くらいの僕…。
どの部屋に行っても、僕がいっぱい。
呆れてしまうほどだ。
だが、写真に写っている僕は、常に満面の笑みで。
その写真を見ていると、微笑ましくもなるのだろう。
特に両親の寝室らしき部屋には、写真立てがいくつも置いてあった。
世間では、これを親馬鹿と言う。
本物の親に愛されたことのない僕には、全く分からない感情だ。
とりあえず、この屋敷の中を探索して分かったことは。
1、案外警備は甘い。
2、トラップや探知機の類は一切ない。
3、両親(仮)が親馬鹿。
以上の三つだ。
上二つは、僕にとって有り難いことだが。
一番下の一つは…。
…どうなんだろう?
両親(仮)はあくまでも(仮)なんだから、愛されようと愛されまいと、どうでも良いことだ。
そもそもこの世界は、魔封じの石とやらが作った仮初めの世界なのだ。
そんな仮初めの世界の住人に愛されようと、何にも心に響かない。
僕には関係ない。
それより僕にとって大事なのは、鍵だ。
この世界を壊し、魔封じの石を回収して、元の世界に帰る為の鍵。
一体、何処にあるのだろう?
多分僕は今、まだ、敵の手のひらの上だ。
目に見えない罠にかかったままだ。
まずは、この手のひらの上から、脱出しなければならない。
その為に、何をすれば良いか。
簡単なことだ。
僕が、敵にとって予想外のことをすれば良い。
それで、敵の罠からは逃れられる。
そしてその瞬間こそが、世界の亀裂となり、脱出の突破口になる…。
…と、思う。
ひとまず、屋敷の中には、ヒントになりそうなものはなかった。
今日は、それが分かっただけでも吉としよう。
明日は両親(仮)同伴とはいえ、外に出るらしいから。
今度は外に出て、調査をするとしよう。
野ネズミのように、屋根裏にまで侵入した。
敷地内に蔵まであったので、そこも鍵を開けて乗り込んできた。
何があるのかと思ったが、古い骨董品みたいなものがコレクションされていただけだった。
父親(仮)の趣味だろうか?
それよりも。
この屋敷を一周して、分かったことは。
あの父親(仮)は…と言うか、この家の人間は、代々。
かなり、家族意識が強い人柄のようだ。
結婚して十年目でようやく生まれた僕を、あれほど可愛がっていた訳だ。
屋敷の中で一番広い居間には、この家代々の当主の写真が、並んで飾ってあった。
随分古い写真から残っている。
写真どころか、最初の数人は肖像画だった。
成程、それで僕の写真も撮りまくっていたんだろう。
そう、写真。
この家は、どの部屋にも必ずと言って良いほど、写真立てが置いてある。
写真立てに入っている写真は、どれも僕が写っている。
赤ん坊の僕、二、三歳のときの僕、五、六歳の頃の僕、十歳くらいの僕…。
どの部屋に行っても、僕がいっぱい。
呆れてしまうほどだ。
だが、写真に写っている僕は、常に満面の笑みで。
その写真を見ていると、微笑ましくもなるのだろう。
特に両親の寝室らしき部屋には、写真立てがいくつも置いてあった。
世間では、これを親馬鹿と言う。
本物の親に愛されたことのない僕には、全く分からない感情だ。
とりあえず、この屋敷の中を探索して分かったことは。
1、案外警備は甘い。
2、トラップや探知機の類は一切ない。
3、両親(仮)が親馬鹿。
以上の三つだ。
上二つは、僕にとって有り難いことだが。
一番下の一つは…。
…どうなんだろう?
両親(仮)はあくまでも(仮)なんだから、愛されようと愛されまいと、どうでも良いことだ。
そもそもこの世界は、魔封じの石とやらが作った仮初めの世界なのだ。
そんな仮初めの世界の住人に愛されようと、何にも心に響かない。
僕には関係ない。
それより僕にとって大事なのは、鍵だ。
この世界を壊し、魔封じの石を回収して、元の世界に帰る為の鍵。
一体、何処にあるのだろう?
多分僕は今、まだ、敵の手のひらの上だ。
目に見えない罠にかかったままだ。
まずは、この手のひらの上から、脱出しなければならない。
その為に、何をすれば良いか。
簡単なことだ。
僕が、敵にとって予想外のことをすれば良い。
それで、敵の罠からは逃れられる。
そしてその瞬間こそが、世界の亀裂となり、脱出の突破口になる…。
…と、思う。
ひとまず、屋敷の中には、ヒントになりそうなものはなかった。
今日は、それが分かっただけでも吉としよう。
明日は両親(仮)同伴とはいえ、外に出るらしいから。
今度は外に出て、調査をするとしよう。


