神殺しのクロノスタシスⅣ

さて、それはそれ。

両親に見守られ、僕は目を閉じた。

…そのまま、二時間後。

深夜。日付が変わる頃。

僕の…僕達の時間がやって来た。

さぁ、覚醒の時間だ。

僕は、寝心地の悪い布団から、さっと抜け出した。

家族仲が良いのは、結構なことだが…それは僕には関係のないことだ。

僕には、僕の任務がある。

いつもの黒装束も小太刀もないので、どうにも心地が悪いけど。

文句を言っても仕方がないので、僕は部屋を探し回ってやっと見つけた、彫刻刀を懐に忍ばせた。

小太刀の代わりにしては、あまりにも貧弱だ。

とはいえ、丸腰よりはマシ。

細長いものなら、何でも目に突き立てれば凶器になる。

では、行こうか。

僕は、こっそり自分の部屋を抜け出した。

この屋敷の間取りは、昼間のうちに大体把握している。

問題は、屋敷の中にいる使用人だ。

僕が夜中に抜け出していると知れたら、両親(仮)に報告され、面倒なことになるだろう。

だから、誰にも見つからないように、屋敷の中を探索しなければならない。

外にも出たいところだが、まずはこの屋敷の中の調査を優先する。

僕は、抜き足差し足で、足音を立てないように廊下を歩いた。

人の気配を避け、時に物陰に隠れながら進む。

この世界は、魔封じの石の影響か、魔法が使えない。

それはさっき試した。魔力を込めようとしても、ガス欠を起こしたみたいに、全く力が入らない。

普通の魔導師からしたら、非常に不便なんだろうが。

僕には、大して関係ない。

僕は元々、偏った力魔法しか使えないのだから。

魔法縛りをされた世界でも、それほど不自由は感じない。

その点、『八千歳』は不便に思ってるだろうな。

まぁ、彼のことは心配してない。

心配など無用の相手だと、分かっているからだ。