僕が開いたのは、本ではなかった。
アルバムだった。
写真がたくさん貼り付けられた、アルバム。
白黒の写真にはどれも、僕と見られる人物が写っていた。
生まれたての赤ん坊を抱いて、嬉しそうに微笑む母親(仮)の写真。
その隣には、今度は父親(仮)が、赤ん坊を抱いてカメラに笑顔を向けている。
それだけではない。
僕と見られる赤ん坊の写真が、たくさん貼ってあった。
何ページ捲ってみても、現れる写真はどれも僕ばかり…。
このアングル、さっきも見なかった?と思って見比べても。
着ているものが違ったりして、別々の写真なんだなと理解する。
こんなにたくさん、僕の写真ばかり撮ってどうするんだ。
更に、もう一つ気づいたことは。
僕の写真まみれのアルバム、この一冊だけじゃない。
アルバムが置いてあった隣も、その隣も、その隣も。
同様に、僕の成長記録とばかりに、年代別の僕の写真がアルバムに綴じられていた。
何処を開いても、僕の写真。
この部屋は、監視カメラでもつけられているのか?って思うくらい。
僕の写真がたくさん。
庭で遊んでいる僕の写真。
おやつを食べている僕の写真。
本を読んでいる僕の写真。
筆を持って習字をしている僕の写真。
楽器を弾いている僕の写真。
昼寝をしている僕の写真。
そこに不定期に、母親(仮)と父親(仮)が写り込んでいた。
写真に写っている両親(仮)の顔は、いつだって笑顔だった。
僕の知らない、僕の家族の絆がそこにあった。
「…」
こんなの…見せられたって、僕は知らないよ。
僕の知らない世界だ。
これを見せて、僕にどうしろって言うんだ。
「何を見せたって…全部、僕のものじゃないのに…」
僕はそう呟いて。
アルバムを、本棚に収めよう…と、したら。
再び、襖の向こうから僕を呼ぶ声がした。
「令?いるのか?」
「入るよ」
噂をすれば何とやら。
母親(仮)と父親(仮)だった。
さっき散々写真で見た顔が、今度は、現実に目の前にある。
「どうしたの?」
何の用だ。僕に。
「お休みを言いに来たのよ。令、そろそろ寝る時間でしょう?」
え?僕もう寝てるの?
まだ午後10時前だよ?
ここからが、覚醒する時間なんじゃないか。
「何をしてたんだ?令…」
父親(仮)が聞いた。
「アルバムを見てた」
「アルバム?そうか」
「一つ聞いても良い?」
「うん?どうした?」
僕は、疑問を一つ解消することにした。
「これ…僕の写真なんだよね?」
「そうだよ?」
今更何を、と言わんばかりの父親(仮)。
「何で、こんなにたくさんあるの?」
似たような写真ばかり、何枚も何枚も。
フィルムの無駄遣いだ。
…しかし。
アルバムだった。
写真がたくさん貼り付けられた、アルバム。
白黒の写真にはどれも、僕と見られる人物が写っていた。
生まれたての赤ん坊を抱いて、嬉しそうに微笑む母親(仮)の写真。
その隣には、今度は父親(仮)が、赤ん坊を抱いてカメラに笑顔を向けている。
それだけではない。
僕と見られる赤ん坊の写真が、たくさん貼ってあった。
何ページ捲ってみても、現れる写真はどれも僕ばかり…。
このアングル、さっきも見なかった?と思って見比べても。
着ているものが違ったりして、別々の写真なんだなと理解する。
こんなにたくさん、僕の写真ばかり撮ってどうするんだ。
更に、もう一つ気づいたことは。
僕の写真まみれのアルバム、この一冊だけじゃない。
アルバムが置いてあった隣も、その隣も、その隣も。
同様に、僕の成長記録とばかりに、年代別の僕の写真がアルバムに綴じられていた。
何処を開いても、僕の写真。
この部屋は、監視カメラでもつけられているのか?って思うくらい。
僕の写真がたくさん。
庭で遊んでいる僕の写真。
おやつを食べている僕の写真。
本を読んでいる僕の写真。
筆を持って習字をしている僕の写真。
楽器を弾いている僕の写真。
昼寝をしている僕の写真。
そこに不定期に、母親(仮)と父親(仮)が写り込んでいた。
写真に写っている両親(仮)の顔は、いつだって笑顔だった。
僕の知らない、僕の家族の絆がそこにあった。
「…」
こんなの…見せられたって、僕は知らないよ。
僕の知らない世界だ。
これを見せて、僕にどうしろって言うんだ。
「何を見せたって…全部、僕のものじゃないのに…」
僕はそう呟いて。
アルバムを、本棚に収めよう…と、したら。
再び、襖の向こうから僕を呼ぶ声がした。
「令?いるのか?」
「入るよ」
噂をすれば何とやら。
母親(仮)と父親(仮)だった。
さっき散々写真で見た顔が、今度は、現実に目の前にある。
「どうしたの?」
何の用だ。僕に。
「お休みを言いに来たのよ。令、そろそろ寝る時間でしょう?」
え?僕もう寝てるの?
まだ午後10時前だよ?
ここからが、覚醒する時間なんじゃないか。
「何をしてたんだ?令…」
父親(仮)が聞いた。
「アルバムを見てた」
「アルバム?そうか」
「一つ聞いても良い?」
「うん?どうした?」
僕は、疑問を一つ解消することにした。
「これ…僕の写真なんだよね?」
「そうだよ?」
今更何を、と言わんばかりの父親(仮)。
「何で、こんなにたくさんあるの?」
似たような写真ばかり、何枚も何枚も。
フィルムの無駄遣いだ。
…しかし。


