入浴後。
部屋に戻った僕は、自分の部屋の中を見渡した。
相変わらず全く見覚えのない、他人の部屋だが。
でも今は、僕が自由に動き回れるのは、この部屋だけだから。
手始めに僕は、本棚にあった一冊の本を手にとってみた。
ここは異次元世界。
夢の中みたいなものだ。
夢の中で、本を読んだことってあるか?
その本の内容を、詳細に覚えていたことってあるか?
僕はない。
もしかしてこの本は、本の形をしているだけで、中身白紙なんじゃないか、と。
そこまで異次元世界で、リアルの世界を「再現」するのは難しいんじゃないのか。
そう思って、僕は本を開いてみることにしたのだ。
それがもしかしたら、この世界の綻びに繋がるかもしれない。
しかし、そこに。
「お坊ちゃま、失礼致します」
女中が、部屋の襖を開けた。
「…何?」
「奥様…お母様の言いつけで、干し柿をお持ちしましたので、どうぞお召し上がりください」
あぁ、そういえば言ってたね、そんなこと。
覚えててくれたんだ、あの母親(仮)。
「うん、分かった」
「はい。それでは、ごゆっくり…」
女中は、干し柿と煎茶を乗せたお盆を、僕の部屋に置いて去っていった。
干し柿が食べたかった云々は、ただの方便。
しかし、食べ物を無駄にする趣味はない。
ので。
「もぐもぐ」
ご丁寧に、薄くスライスした干し柿を、まるごと摘んで口に放り込む。
スライスしてくれるのは有り難いけど。
干し柿と言えばやっぱり、まるのままのを齧り付くのが粋だと思う。
味は悪くない。
ずずず、とお茶を飲み干し。
干し柿タイム終了。ご馳走様。
さて、干し柿も食べ終わったので、本を開いてみよう。
僕は、手に取った一冊の本を、ぺらっ、と捲ってみた。
すると。
「…これ…」
これは…予想していなかった。
部屋に戻った僕は、自分の部屋の中を見渡した。
相変わらず全く見覚えのない、他人の部屋だが。
でも今は、僕が自由に動き回れるのは、この部屋だけだから。
手始めに僕は、本棚にあった一冊の本を手にとってみた。
ここは異次元世界。
夢の中みたいなものだ。
夢の中で、本を読んだことってあるか?
その本の内容を、詳細に覚えていたことってあるか?
僕はない。
もしかしてこの本は、本の形をしているだけで、中身白紙なんじゃないか、と。
そこまで異次元世界で、リアルの世界を「再現」するのは難しいんじゃないのか。
そう思って、僕は本を開いてみることにしたのだ。
それがもしかしたら、この世界の綻びに繋がるかもしれない。
しかし、そこに。
「お坊ちゃま、失礼致します」
女中が、部屋の襖を開けた。
「…何?」
「奥様…お母様の言いつけで、干し柿をお持ちしましたので、どうぞお召し上がりください」
あぁ、そういえば言ってたね、そんなこと。
覚えててくれたんだ、あの母親(仮)。
「うん、分かった」
「はい。それでは、ごゆっくり…」
女中は、干し柿と煎茶を乗せたお盆を、僕の部屋に置いて去っていった。
干し柿が食べたかった云々は、ただの方便。
しかし、食べ物を無駄にする趣味はない。
ので。
「もぐもぐ」
ご丁寧に、薄くスライスした干し柿を、まるごと摘んで口に放り込む。
スライスしてくれるのは有り難いけど。
干し柿と言えばやっぱり、まるのままのを齧り付くのが粋だと思う。
味は悪くない。
ずずず、とお茶を飲み干し。
干し柿タイム終了。ご馳走様。
さて、干し柿も食べ終わったので、本を開いてみよう。
僕は、手に取った一冊の本を、ぺらっ、と捲ってみた。
すると。
「…これ…」
これは…予想していなかった。


