神殺しのクロノスタシスⅣ

「いやぁ、普段は一人でばかり夕飯を食べているから、こうして家族揃って囲む食卓は、かくべ、え?」

もぐもぐもぐもぐ。

もぐもぐもぐもぐ。

ごくん。

もぐもぐもぐもぐ。

「れ、令?」

「ど、どうしたの!?」

両親(仮)は、僕を見て驚愕していた。

が、僕は気にしなかった。

気にせず、白米とおかずを口の中いっぱいに掻き込んで、高速で咀嚼する。

今日はいつもより、おかずの量が多いので。

咀嚼のスピードも、三割増しである。

「ちょ、令…!落ち着いて食べなさい!」

「喉に詰まるでしょう!?」

大丈夫。そんな失敗はしない。

もぐもぐもぐもぐ。

ごくん。

イーニシュフェルト魔導学院に入ってからというもの、何故か毎度毎度、一日に三食も食べさせれている。

僕はいつも、「そんな必要ないのになぁ」と思いながらも、それが学院の規則だから、ちゃんと食べている。

更に学院長も、しょっちゅう甘いものばかり食べている。

が、僕にはその理由が分からない。

食事をしている時間というのは、非常に無駄な時間だ。

少なくとも、僕達魔導師にとっては。

睡眠は、まぁ、睡眠も大概無駄だとは思うが、身体の疲労を取る為だと思えば納得出来る。

しかし、食事の時間は無駄だ。

僕達は食べなくても死なないんだから、いくら食べても食材の無駄だし、時間の無駄。

そして時間というのは、等しく誰にも平等である。

平等な時間を、少しでも有益に使うには…無駄な時間を省くべき。

アホでも分かる理屈だ。

だから僕は、この高速食べを実行する。

食事の時間は、精々五分未満で良い。

それ以上の時間を費やすのは、勿体無い。

もぐもぐもぐもぐ。

ごくん。

それなのに。

「こら、令…!行儀の悪い」

何故か怒られる。

行儀…?

「お腹が空いていたのかい?」

いや、全く。

「食べ物は逃げないんだから、落ち着いて、ゆっくり食べなさい」

「そうよ。ちゃんと噛まないと喉に詰まらせるわよ」

凄くしっかり噛んでるよ。咀嚼回数数えながら。

で、そんなことを言ってる間に。

食事終了。

初めて食べるものがたくさんあったけど、味は覚えてない。

異次元世界で食べたものの味なんて、参考にならないか。

ここは、現実じゃないんだから。

夢の中で食べたのと同じだと思おう。

「お、お坊ちゃま。お代わりは如何ですか?」

僕の超高速食べを見て、余程空腹だと思ったのか。

傍に控えていた女中が、そう声をかけた。

お代わり云々より、お坊ちゃまと呼ばれたことに衝撃を受けた。

僕の、何処がお坊ちゃま?

庶民だよ僕は。

最底辺の庶民。

「ううん、要らない」

「そ、そうですか…」

無事、食事は五分以内で終わった。

やはり、無駄なことに時間をかけるのは良くない。

こんな状況なら、尚更。