神殺しのクロノスタシスⅣ

で、その父親(仮)に連れられて、ついていった先には。

大きなテーブルいっぱいに、所狭しと食べ物の並んだ、非常に豪華な食卓だった。

…懐石料理?

何処かの料亭…?

昔、『アメノミコト』にいたとき。

頭領が行った取引先との食事会に、護衛としてついていったことがあるが。

そのとき頭領が食べていた料理に、よく似ている。

凄く豪華で、味もよく分かりそうにない料理の数々。

その食卓で、母親(仮)が待っていた。

「あぁ、二人共来たのね」

「遅くなって済まなかった。さぁ、三人揃ったことだし、早く食べよう」

「えぇ、そうね」

そんな会話をして、中年夫婦は、食事を開始した。

「…ん?さぁ、お前も座って食べなさい」

父親(仮)が、立ち尽くす僕の方を見て言った。

えっ。

食べる?僕が?

これを?

僕は護衛なんだから、護衛が食事をする訳にはいかない…。

…いや待て。僕はもう頭領の護衛じゃない。

その時代は、もう終わったのだ。

「さぁ、ほら」

父親(仮)が、一つ空いている座布団を手で指した。

…まさか、僕がこんな晩餐会に招かれるとは。

異次元世界というのは、随分太っ腹なんだな。

僕は別に、食事をする必要はないんだが…。

僕は勧められるままに、座布団に腰を下ろした。

すると、それを待っていたかのように。

女中らしい若い女性が、白米をたっぷりよそったお茶碗を、そっと僕の前に置いた。

…。

…何なら僕、おかず要らないから。

この白米だけ食べて良いかな?

それで充分だ。

しかし僕の前には、小鉢に並んだたくさんの懐石料理の数々。

折角食べ物があるのに、それを無駄にして突き返すのは、僕の流儀に反する。

…ので。

箸を持った僕は、普段のキッチンタイマーモードに移行した。