この人、僕の父親なのか。
やっぱり、僕の本当の父親とは似ても似つかないけど。
そもそも、そんなに覚えてないけど。
この世界では、この人が父親役であるらしい。
へぇ。
「聞いたよ。昼間は庭の木に登ったりして、それで落ちたんだろう?」
「うん、落ちた」
「そんな危ないことをしたら駄目だ。何でそんなことしたんだ?」
何でって言われても。
僕にも分からない。この世界に来たときには、既に木登りの真っ最中だったし。
何がしたかったんだろう、僕。
でも、柿の木に登る理由なんて一つしかない。
多分、
「柿が食べたかったからかな」
これ以外に理由はないはずだ。
すると父親(仮)は、溜め息を溢した。
「あれは渋柿なんだから、取っても食べられないよ」
そうなんだ。
そういえば母親(仮)も言ってたね、同じこと。
渋柿と言えば、あれか…。干して干し柿にする…。
「じゃあ、干し柿が食べたかったから」
「なら、素直にそう言いなさい。木に登ったりして…危ないだろう?」
別にそんなことはない。
高層ビルの屋上までよじ登れ、と言われる方が、余程大変だ。
木登りなら容易いもの。ましてやあんなちっちゃな木なら、尚更。
でも、どうにもこの夫妻は過保護なようで。
「干し柿なら、後で使用人に持って行かせるから。もうあんな危ないことはしたらいけないよ」
「…」
「分かった?」
「…うん」
頷いておいた。
仕方がないので。
この人と口論しても、どうにもならない。
「それと…変なことを言って、お母さんを困らせないこと」
「変なこと?」
「お母さんから聞いたよ。世界を壊すとか何とか…」
あぁ、それ。
折角父親(仮)という登場人物も増えたんだし、この人にも聞いてみようと思ったのだが…。
「何をおかしなことを思いついたんだか、全く」
…何だか、それどころじゃないっぽいね。
呆れて溜め息つかれちゃったよ。
「もうおかしなこと言うんじゃないよ。分かったね?良い子にしてたら…そうだ、今度、遊園地に連れて行ってあげるから」
「遊園地?」
「そう。先月出来たばかりの遊園地。行きたがってただろう?」
そうなの?
「今度お父さんが休みのときに、連れて行ってあげるよ。だから、大人しく良い子にしてるんだよ?」
「…分かった」
遊園地とかは、別にどうでも良いけど。
この人に何を聞いても、多分何の情報も持ってない。
そう判断した。
「よし。じゃあ、そろそろ夕食を食べようか。お母さんも待ってるよ」
父親(仮)は、わざわざ僕の手を繋いで、広い屋敷の廊下を歩き出した。
やっぱり、僕の本当の父親とは似ても似つかないけど。
そもそも、そんなに覚えてないけど。
この世界では、この人が父親役であるらしい。
へぇ。
「聞いたよ。昼間は庭の木に登ったりして、それで落ちたんだろう?」
「うん、落ちた」
「そんな危ないことをしたら駄目だ。何でそんなことしたんだ?」
何でって言われても。
僕にも分からない。この世界に来たときには、既に木登りの真っ最中だったし。
何がしたかったんだろう、僕。
でも、柿の木に登る理由なんて一つしかない。
多分、
「柿が食べたかったからかな」
これ以外に理由はないはずだ。
すると父親(仮)は、溜め息を溢した。
「あれは渋柿なんだから、取っても食べられないよ」
そうなんだ。
そういえば母親(仮)も言ってたね、同じこと。
渋柿と言えば、あれか…。干して干し柿にする…。
「じゃあ、干し柿が食べたかったから」
「なら、素直にそう言いなさい。木に登ったりして…危ないだろう?」
別にそんなことはない。
高層ビルの屋上までよじ登れ、と言われる方が、余程大変だ。
木登りなら容易いもの。ましてやあんなちっちゃな木なら、尚更。
でも、どうにもこの夫妻は過保護なようで。
「干し柿なら、後で使用人に持って行かせるから。もうあんな危ないことはしたらいけないよ」
「…」
「分かった?」
「…うん」
頷いておいた。
仕方がないので。
この人と口論しても、どうにもならない。
「それと…変なことを言って、お母さんを困らせないこと」
「変なこと?」
「お母さんから聞いたよ。世界を壊すとか何とか…」
あぁ、それ。
折角父親(仮)という登場人物も増えたんだし、この人にも聞いてみようと思ったのだが…。
「何をおかしなことを思いついたんだか、全く」
…何だか、それどころじゃないっぽいね。
呆れて溜め息つかれちゃったよ。
「もうおかしなこと言うんじゃないよ。分かったね?良い子にしてたら…そうだ、今度、遊園地に連れて行ってあげるから」
「遊園地?」
「そう。先月出来たばかりの遊園地。行きたがってただろう?」
そうなの?
「今度お父さんが休みのときに、連れて行ってあげるよ。だから、大人しく良い子にしてるんだよ?」
「…分かった」
遊園地とかは、別にどうでも良いけど。
この人に何を聞いても、多分何の情報も持ってない。
そう判断した。
「よし。じゃあ、そろそろ夕食を食べようか。お母さんも待ってるよ」
父親(仮)は、わざわざ僕の手を繋いで、広い屋敷の廊下を歩き出した。


