…と、いう確信を得たは良いものの。
それだけだった。
それ以上のことを思い出せない僕に、行動を起こすことは出来なかった。
何かが足りないのだ。何かが…。
僕は忘れている。とても大事なことを…。
一番大切なことは覚えてるのになぁ…。それ以外がさっぱりじゃ、どうしようもない。
だから僕は今日、こうして。
周囲に流されるようにして、村のお祭りに参加している。
例の、幼女がくれた白いビーズのネックレスを、首から下げて。
僕って本当、何やってるんでしょうね?
「…あら?どうかしました?」
僕がボーッとしているのを見て、ご婦人が声をかけてきた。
今日はご婦人も、お祭りだということで、特別綺麗な着物を着て、色鮮やかなビーズをつけておめかししている。
村の皆がそんな感じ。
「あ、いえ…大丈夫です。それより…あの、盛大なお祭りですね」
「えぇ。そうでしょう?」
村をあげてのお祭りだというのは、本当だったようで。
ご主人と、村の男衆が時間をかけて建てた小屋には、村人全員が入れるほどの広さがあった。
そして、今日の為に作られたご馳走の数々が、小屋の中央に所狭しと並んでいる。
今日はお酒も次々と開けられて、僕は遠慮して飲まなかったけど、既に五、六回ほどお酒を勧められている。
どうしても、とてもお酒を飲む気分にはなれなくて。
更に、様々な楽器も持ち込まれて、笛や太鼓の音が小屋の中に響いている。
その音楽に合わせて、村人達は踊ったり歌ったり、まさにお祭り騒ぎとはこのことである。
「遠慮しないで、お祭りを楽しんでくださいね」
「はい…」
ご婦人に気遣われても、僕の心境は変わらない。
僕はこんなところにいてはいけない。彼らが楽しそうであればあるほど…僕は疎外感を感じるのだ。
それに何なんだ、この白いビーズは…。僕に白なんて、似合うはずがない。
折角幼女が作ってくれたから、仕方なく身につけてはいるけれど。
正直、外したくて仕方なかった。
すると。
「お兄ちゃん、はい、これ」
僕にこのビーズのネックレスをくれた張本人が、食べ物を乗せたお皿を持ってきた。
「今日しか食べられないおやつなんだよ。美味しいよ」
「あ、はい。ありがとうございます…」
「ねぇ、お兄ちゃんも向こうで一緒に踊ろうよ。皆踊ってるよ?」
お、踊りって…。
「いえ…僕のことは気にしなくて良いですから、楽しんできてください」
「…?そう?」
「えぇ。折角の…年に一度のお祭りなんでしょう?ほら…向こうでお友達が待ってますよ」
「うん。じゃあ、また後で戻ってくるね!」
そうですか。
僕は、努めて笑顔で幼女を送り出した。
…はぁ…。
何でだろう。今日はいつにも増して、気分が冴えない…。
折角皆お祭りで楽しんでいるのに、一人だけテンションが低い奴がいたら、萎えるよな…。
せめて、楽しそうな振りでもしてれば良いんだろうけど…。
それすら出来る気がしないので、いっそもう、僕のことはいない者として、そっとしておいて欲しい…と。
思っていた矢先。
「ここにいたのか」
…うげ、と言いそうになった。
今度は、僕が厄介になっている家のご主人が、僕の前にやって来た。
それだけだった。
それ以上のことを思い出せない僕に、行動を起こすことは出来なかった。
何かが足りないのだ。何かが…。
僕は忘れている。とても大事なことを…。
一番大切なことは覚えてるのになぁ…。それ以外がさっぱりじゃ、どうしようもない。
だから僕は今日、こうして。
周囲に流されるようにして、村のお祭りに参加している。
例の、幼女がくれた白いビーズのネックレスを、首から下げて。
僕って本当、何やってるんでしょうね?
「…あら?どうかしました?」
僕がボーッとしているのを見て、ご婦人が声をかけてきた。
今日はご婦人も、お祭りだということで、特別綺麗な着物を着て、色鮮やかなビーズをつけておめかししている。
村の皆がそんな感じ。
「あ、いえ…大丈夫です。それより…あの、盛大なお祭りですね」
「えぇ。そうでしょう?」
村をあげてのお祭りだというのは、本当だったようで。
ご主人と、村の男衆が時間をかけて建てた小屋には、村人全員が入れるほどの広さがあった。
そして、今日の為に作られたご馳走の数々が、小屋の中央に所狭しと並んでいる。
今日はお酒も次々と開けられて、僕は遠慮して飲まなかったけど、既に五、六回ほどお酒を勧められている。
どうしても、とてもお酒を飲む気分にはなれなくて。
更に、様々な楽器も持ち込まれて、笛や太鼓の音が小屋の中に響いている。
その音楽に合わせて、村人達は踊ったり歌ったり、まさにお祭り騒ぎとはこのことである。
「遠慮しないで、お祭りを楽しんでくださいね」
「はい…」
ご婦人に気遣われても、僕の心境は変わらない。
僕はこんなところにいてはいけない。彼らが楽しそうであればあるほど…僕は疎外感を感じるのだ。
それに何なんだ、この白いビーズは…。僕に白なんて、似合うはずがない。
折角幼女が作ってくれたから、仕方なく身につけてはいるけれど。
正直、外したくて仕方なかった。
すると。
「お兄ちゃん、はい、これ」
僕にこのビーズのネックレスをくれた張本人が、食べ物を乗せたお皿を持ってきた。
「今日しか食べられないおやつなんだよ。美味しいよ」
「あ、はい。ありがとうございます…」
「ねぇ、お兄ちゃんも向こうで一緒に踊ろうよ。皆踊ってるよ?」
お、踊りって…。
「いえ…僕のことは気にしなくて良いですから、楽しんできてください」
「…?そう?」
「えぇ。折角の…年に一度のお祭りなんでしょう?ほら…向こうでお友達が待ってますよ」
「うん。じゃあ、また後で戻ってくるね!」
そうですか。
僕は、努めて笑顔で幼女を送り出した。
…はぁ…。
何でだろう。今日はいつにも増して、気分が冴えない…。
折角皆お祭りで楽しんでいるのに、一人だけテンションが低い奴がいたら、萎えるよな…。
せめて、楽しそうな振りでもしてれば良いんだろうけど…。
それすら出来る気がしないので、いっそもう、僕のことはいない者として、そっとしておいて欲しい…と。
思っていた矢先。
「ここにいたのか」
…うげ、と言いそうになった。
今度は、僕が厄介になっている家のご主人が、僕の前にやって来た。


