その頃には、僕の身を取り巻く環境も、そして僕自身の心境も、かなり変わっていた。
まず、松葉杖をつかなくても良くなった。
三食ごとに飲まされる、あの薬のお陰なのか。
擦り傷まみれの身体も、足首の捻挫も、すっかり治った。
お陰で、松葉杖をつかなくても、村の中を自由に歩き回れるようになっていた。
…と言っても、村の周囲の地理に疎い僕は、一人で森の中に入ることは禁じられていたが。
僕が周囲を探索しようとすると、たちまち村人に止められた。
「故郷を探したい気持ちは分かるが、この季節に不用意に森の中に入るのはやめた方が良い」と。
別に僕は、故郷探しをしたい訳ではなかったのだが。
それはともかく。
村の外を歩き回れない代わりに…と言ってはなんだが。
足が治るなり、村中の各家々に招待された。
昨日はこの家、今日はあの家、明後日はその家、みたいに。
次はうちにおいでよ、いやいやうちに、と、まるで取り合いでもするかのように。
行く先々で、食事をご馳走になった。
この村の料理は、素朴だが手の込んだものが多くて、味はとても美味しかった。
ただ、もてなそうとする精神が大き過ぎて、量がめちゃくちゃ多かった。
そして、そのせいなのかどうかは分からないが。
やっぱり僕は、いかなるときでも、空腹を感じるということがなかった。
「お腹空いてるでしょう?」と言われても、「はい」と答えた試しがない。
村人は、僕が遠慮していると思っていたようだが。
遠慮などではない。本当に、僕の身体は空腹を感じない。
それどころか、食事をする必要性すらないのだ。
別に絶食して試した訳じゃないけど、本能でそれが分かる。
以上が、僕の周囲の環境の変化。
そして、僕自身の心境の変化についてだが…。
僕はここにいるべき存在ではない。
日増しに増すその疑念が、今は確信に変わっていた。
故郷じゃないのだから当たり前、と言われればそうなのだが。
でも、そういう次元の話ではないのだ。
故郷じゃないとかじゃなくて、それ以前の問題。
僕は、もっと別の、こことは全く違うから来た。
何らかの使命を帯びて。
それがどんな場所なのか、どんな使命なのかは分からないけど。
とにかく僕は、ここにいて良い人間ではないのだ。
まず、松葉杖をつかなくても良くなった。
三食ごとに飲まされる、あの薬のお陰なのか。
擦り傷まみれの身体も、足首の捻挫も、すっかり治った。
お陰で、松葉杖をつかなくても、村の中を自由に歩き回れるようになっていた。
…と言っても、村の周囲の地理に疎い僕は、一人で森の中に入ることは禁じられていたが。
僕が周囲を探索しようとすると、たちまち村人に止められた。
「故郷を探したい気持ちは分かるが、この季節に不用意に森の中に入るのはやめた方が良い」と。
別に僕は、故郷探しをしたい訳ではなかったのだが。
それはともかく。
村の外を歩き回れない代わりに…と言ってはなんだが。
足が治るなり、村中の各家々に招待された。
昨日はこの家、今日はあの家、明後日はその家、みたいに。
次はうちにおいでよ、いやいやうちに、と、まるで取り合いでもするかのように。
行く先々で、食事をご馳走になった。
この村の料理は、素朴だが手の込んだものが多くて、味はとても美味しかった。
ただ、もてなそうとする精神が大き過ぎて、量がめちゃくちゃ多かった。
そして、そのせいなのかどうかは分からないが。
やっぱり僕は、いかなるときでも、空腹を感じるということがなかった。
「お腹空いてるでしょう?」と言われても、「はい」と答えた試しがない。
村人は、僕が遠慮していると思っていたようだが。
遠慮などではない。本当に、僕の身体は空腹を感じない。
それどころか、食事をする必要性すらないのだ。
別に絶食して試した訳じゃないけど、本能でそれが分かる。
以上が、僕の周囲の環境の変化。
そして、僕自身の心境の変化についてだが…。
僕はここにいるべき存在ではない。
日増しに増すその疑念が、今は確信に変わっていた。
故郷じゃないのだから当たり前、と言われればそうなのだが。
でも、そういう次元の話ではないのだ。
故郷じゃないとかじゃなくて、それ以前の問題。
僕は、もっと別の、こことは全く違うから来た。
何らかの使命を帯びて。
それがどんな場所なのか、どんな使命なのかは分からないけど。
とにかく僕は、ここにいて良い人間ではないのだ。


