神殺しのクロノスタシスⅣ

「ふぅ…」

親切なお兄さんに、荷物を担いでもらって。

ようやく、居候している家に帰り着いた。

お兄さんは、かごいっぱいの野菜を置いていったよ。

代わりにご婦人は、自分で漬けたという漬物を、お兄さんに持たせていた。

成程この村では、こういうお裾分け文化が根強いんだな。

食料は何でも、村人同士で共有するのだろう。

「大丈夫ですか?疲れました?お茶でも淹れましょうか」

「あ、いえ大丈夫です…」

「遠慮しなくて良いんですよ。淹れてきますから、ちょっと待っててくださいね」

「…」

この村では何でもかんでも、断るという選択は受け付けてもらえないらしい。

それだけ、この村の人々は皆優しくて、親切なのだ。

それは嬉しいのだけど…その気持ちは有り難いのだけど…。

…何故か、僕はその親切を、素直に受け入れることが出来ない。

何でも遠慮しようとする。

自分は親切にされるべき存在ではない、と思ってしまうのだ。

何でだろう…。村の人に優しくされる度、僕は心の隅を針でつつかれるような罪悪感を覚える。

…どうして…。

「お兄ちゃん」

ふと、幼女に呼ばれて、僕はハッとした。

「どうしたの?お兄ちゃん。難しい顔してる」

「え、いや…。大丈夫ですよ」

「何考えてたの?」

何…って。

「…この村の人は、皆優しいですね」

僕は、思わず本音を喋っていた。