で、その村長の家からの帰り道。
多くの村人に話しかけられ、そして労われた。
「お兄さん、気の毒だねぇ。怪我は、まだ治らないのかい?」
「あ、いえ大丈夫です」
「良かったら、うちに泊まっていかないかい?美味しい果物があるんだよ」
「あ…いえ…大丈夫です…」
「そうかい?…じゃあ、お土産に持って帰ると良いよ」
「…」
大丈夫です…という、僕の遠慮の言葉を何だと思っているのか。
村人のおばさんは、かごいっぱいの果物を持たせてきた。
何の果物だろう?これ。
よく分からないけど、押し付けられたものを押し返すことは出来なかった。
更に、十数歩歩くと。
「あ。あんたが村に迷い込んだっていう子かい」
数分足らずで、また声をかけられる。
「は、はい」
「足怪我してんのか。痛むか?」
「大丈夫ですけど…」
「まぁ待ってろ。確かうちに、良い薬があったはず…」
と、村人のおじさんは、家に入ってしばらくごそごそ。
出てきたときには、小さな容器を持っていた。
「これを腫れたところに塗ると良い。痛みなんてすぐ引くから」
「は、はぁ。ありがとうございます…」
「それから…ほら、これ昨日森で獲ってきたキノコだ。焼いて食べると美味いぞ。持っていくと良い」
「…どうも…」
持ち物が。持ち物が増えていく。
やっとおじさんから解放され、さて家路を急ごうと思ったら。
「あれ?あなた、例の記憶喪失になったっていう人?」
また数十歩も歩かないうちから、今度は村人のお姉さんに声をかけられた。
家路が遠い。
「そうですけど…」
「可哀想にね。家が分かれば、送っていってあげるのに…」
「あぁ、はい…」
「まぁ、落ち着くまでこの村にいれば良いわよ。良かったら、今度うちに夕食食べに来てね」
「…どうも」
ぺこり、と会釈すると、村人お姉さんは気を良くしたのか。
「ちょっと待っててね」
と言って、家の中に入って。
何だか嫌な予感がするなぁと思ってたら、案の定。
「はい、これうちで作ったチーズ。是非食べてみて」
続々と増える荷物。
僕松葉杖ついてるんですけど。この荷物を全部持って帰れと?
むしろ迷惑…いや、これもこの村の人々の好意なのだと思おう。
でも僕、いくら食べ物をもらっても、何故か不思議と全然空腹を感じないんだよな。
何故かは分からないけど…。
「どうも…ありがとうございます」
「ううん、良いのよ」
笑顔で手を振るお姉さん。
気持ちは嬉しいが、いくらなんでも荷物が…。
この村の人は、寛容なのも親切なのも良いが、少し加減を知るということを学んだ方が良い。
大荷物を抱え、松葉杖をついてよろよろ歩いていると。
今度は。
「ん?お兄ちゃん大丈夫?」
村人のお兄さんが、声をかけてきた。
またですか。
「足を怪我してるのか。…あぁ、この間村に流れ着いたっていう、記憶喪失の男っていうのは君か?」
「…はい…」
「やっぱりそうだったか。…しかし、随分な大荷物だなぁ。持って帰れるか?」
「…ぶっちゃけ、ちょっと辛いです…」
「あはは」
笑い事じゃないですよ。
「よし、俺が持ってあげよう。丁度、うちで取れた野菜を、君が厄介になっている家にお裾分けしようと思ってたんだ」
そう言って、お兄さんが荷物を全部、代わりに持ってくれた。
とても有り難かった。
多くの村人に話しかけられ、そして労われた。
「お兄さん、気の毒だねぇ。怪我は、まだ治らないのかい?」
「あ、いえ大丈夫です」
「良かったら、うちに泊まっていかないかい?美味しい果物があるんだよ」
「あ…いえ…大丈夫です…」
「そうかい?…じゃあ、お土産に持って帰ると良いよ」
「…」
大丈夫です…という、僕の遠慮の言葉を何だと思っているのか。
村人のおばさんは、かごいっぱいの果物を持たせてきた。
何の果物だろう?これ。
よく分からないけど、押し付けられたものを押し返すことは出来なかった。
更に、十数歩歩くと。
「あ。あんたが村に迷い込んだっていう子かい」
数分足らずで、また声をかけられる。
「は、はい」
「足怪我してんのか。痛むか?」
「大丈夫ですけど…」
「まぁ待ってろ。確かうちに、良い薬があったはず…」
と、村人のおじさんは、家に入ってしばらくごそごそ。
出てきたときには、小さな容器を持っていた。
「これを腫れたところに塗ると良い。痛みなんてすぐ引くから」
「は、はぁ。ありがとうございます…」
「それから…ほら、これ昨日森で獲ってきたキノコだ。焼いて食べると美味いぞ。持っていくと良い」
「…どうも…」
持ち物が。持ち物が増えていく。
やっとおじさんから解放され、さて家路を急ごうと思ったら。
「あれ?あなた、例の記憶喪失になったっていう人?」
また数十歩も歩かないうちから、今度は村人のお姉さんに声をかけられた。
家路が遠い。
「そうですけど…」
「可哀想にね。家が分かれば、送っていってあげるのに…」
「あぁ、はい…」
「まぁ、落ち着くまでこの村にいれば良いわよ。良かったら、今度うちに夕食食べに来てね」
「…どうも」
ぺこり、と会釈すると、村人お姉さんは気を良くしたのか。
「ちょっと待っててね」
と言って、家の中に入って。
何だか嫌な予感がするなぁと思ってたら、案の定。
「はい、これうちで作ったチーズ。是非食べてみて」
続々と増える荷物。
僕松葉杖ついてるんですけど。この荷物を全部持って帰れと?
むしろ迷惑…いや、これもこの村の人々の好意なのだと思おう。
でも僕、いくら食べ物をもらっても、何故か不思議と全然空腹を感じないんだよな。
何故かは分からないけど…。
「どうも…ありがとうございます」
「ううん、良いのよ」
笑顔で手を振るお姉さん。
気持ちは嬉しいが、いくらなんでも荷物が…。
この村の人は、寛容なのも親切なのも良いが、少し加減を知るということを学んだ方が良い。
大荷物を抱え、松葉杖をついてよろよろ歩いていると。
今度は。
「ん?お兄ちゃん大丈夫?」
村人のお兄さんが、声をかけてきた。
またですか。
「足を怪我してるのか。…あぁ、この間村に流れ着いたっていう、記憶喪失の男っていうのは君か?」
「…はい…」
「やっぱりそうだったか。…しかし、随分な大荷物だなぁ。持って帰れるか?」
「…ぶっちゃけ、ちょっと辛いです…」
「あはは」
笑い事じゃないですよ。
「よし、俺が持ってあげよう。丁度、うちで取れた野菜を、君が厄介になっている家にお裾分けしようと思ってたんだ」
そう言って、お兄さんが荷物を全部、代わりに持ってくれた。
とても有り難かった。


