神殺しのクロノスタシスⅣ

それどころか。

熱くて、どろっとしたお粥を頂いた後。

「これを飲むと良い」

と言って、ご主人が手づから、緑色の液体が入った器を持ってきた。

何この青汁?

「これは…?」

「薬草を煎じて作った薬湯だ。これを飲めば、傷の治りも早くなる」

本当に?

見るからに苦そうなんですけど、むしろ飲んだら具合悪くなるのでは?

「…苦そうですね」

「あぁ。息を止めて飲んだ方が良い」

素直ですね。

「でも、飲まないと治らない。ちゃんと飲むんだ」

良薬口に苦しですね、分かります。

その理屈は理解出来るんですが…。

「…僕、薬とか、治療とか、何もしなくても治る気がするんです…」

それどころか、普通の人なら死ぬような致命傷を負っても、大丈夫…。

…な、気がするんですが、これは僕の妄想なのか?

「何を言ってるんだ。そんな人間はいない」

一刀両断。

…ですよね?

僕もそう思うんですが、でもそうじゃないって言うか…。

自分は絶対に大丈夫だという、謎の自信がある。

「さぁ、馬鹿なこと言ってないで飲みなさい」

馬鹿なこと…確かに馬鹿なことだ。

それなのに何故だろう?何処に根拠があるのか、僕のこの自信は…。

「お兄ちゃん、お薬はちゃんと飲まないと駄目なんだよ。私もいっつも飲みたくないけど、でも飲まなかったらお父さんに怒られるから、ちゃんと飲むの」

と、幼女。

はい分かりました。飲みます。

恐ろしい脅迫だ。君は将来大物になるよ。

仕方なく、僕は薬湯の器を持って、息を止めて一気飲みした。

一気飲みしたけど、やっぱり不味かった。

マーライオンしなかった自分を褒めたい。

…はぁ、死ぬかと思った。

「…ご馳走様でした…」

「お兄ちゃん。そのお薬、ご飯の度に飲まないといけないんだよ」

死刑判決ですか?

「…それで」

薬湯を飲み干した僕に、改めてご主人が尋ねた。

「何処から来たのか、記憶がないと聞いたが…」

「あ、はい…」

今のところ、至れり尽くせり状態だし。

とりあえず…追い出される心配はなくなったと思って良いですかね。