神殺しのクロノスタシスⅣ

ひとまずは、この家にいて良いことになったので。

まずは、少しでも情報収集だ。

僕は、布団の傍から離れない幼女に、話しかけてみることにした。

さっきまで花札で遊んでいた幼女だったが。

今度は、ビーズのアクセサリーらしきものを弄っている。

「…あの、ちょっと良いですか?」

「なぁに?」

「僕…川辺に倒れてたんですよね?」

「うん、そうだよ〜」

幼女よ。軽いな。

危うく死にかけたんですよ僕。もうちょっと事態を重く見てください。

とか言いながら、実は僕が一番、実感がない。

本当に死ぬところだったのか?僕は。

死というものに、まるで実感が沸かない。

何処か他人事のようにさえ思っている。

不思議だ。

「どんな様子でした?」

「?よーす?」

あー、えーと。

子供相手に、抽象的な質問は無理か。

「じゃあ、僕何か持ってませんでした?」

何故か、何か持ってたような気がするんですけど…。

何だったろう?気のせいだろうか?

「?何も持ってなかったよ?」

丸腰だったんですか?

じゃあ、何か持ってたような気がしたのは、本当にただの気のせいか…。

…。

「お兄ちゃん、お家が何処か分からないの?」

僕が無言でいると、幼女の方から質問された。

「…そうなんですよ」

僕は自分の家が何処なのか、分からないのだ。

そもそも、僕に家なんてあったんだっけ…?僕の居場所は…?

「それは可哀想ね」

幼女に憐れまれた。

「あなたは良いですね。家があって…お母さんがいて…」

「そうだよ〜。お父さんもいるんだよ」

あ、そうなんですか。

…ん?お父さん?

「そのお父さんは、今どちらに…?」

「今はお仕事に行ってるよ!」

成程。

で、夕方に帰ってきて、僕を見て「誰だこの男?」ってなって、「怪しいからやっぱり追い出そう」で満場一致までが一連の流れってことですね。分かりました。

辛い。

いや待て。ご婦人優しそうな人だったし、ワンチャンお父さんも。

「お父さんって…優しいですか?」

「うん!」

良かった。それならまだ希望が持て…、

「でも、怒ると凄く怖いんだよ」

…ませんでした。終了のお知らせです。

どう考えても、家に帰って正体不明の余所者がいたら、警戒するのは当たり前。

最悪追い出されなくても、家の中ギスギスしたりするんだろうか…。

今晩は泊めてあげるけど、明日になったら出ていって、のパターンかも。

良い未来が見えない…。

「えーと…。お父さんは、今何のお仕事をしてるんですか?」

畑仕事とか?

「お家を作ってるんだよ」

まさかの土木工事?

「今度、お祭りがあるから。村の皆で、お祭りの為の小屋を建ててるの」

「お祭り…?」

「うん!年に一回ある、村で一番のお祭りなの」

へぇ…そんなのあるんですか。