神殺しのクロノスタシスⅣ

だが、今は信じてもらえるよう祈るしかない。

「全然覚えてないんです…。僕、何してたんですか…?」

「本当に…覚えていないんですか?」

「はい…全く…」

これには、ご婦人もびっくり。

すると、ご婦人が教えてくれた。

「あなたは、川辺に倒れていたんですよ。流木に引っ掛かっているところを、近くの森に木の実を取りに行ってた、この子が見つけて…」

何だ、それは。

川から流れて来たって言うのか?

「僕、リアル桃太郎…?」

「…え…?」

「あ、いやこっちの話です…」

桃太郎通じない文化ですか。そうですか。

しかし、その話が本当なら、身体中傷まみれなのも納得出来る。

川上から、どんぶらこどんぶらこと流れてきたんだろう?

そりゃ、身体中傷だらけにもなりますよ。

って言うか、よく生きてましたね、僕。

我ながら、自分の生命力にびっくり…って。

…生命力…?

僕に生命力なんて…だって僕の身体は…。

…。

…今、何を考えたんだっけ?

まぁ、それよりも。

「あなたが見つけてくれたんですね、ありがとうございます」

僕は、幼女にお礼を言った。

「えへへ」

照れて笑う幼女である。

君が見つけてくれなかったら、僕、今頃溺れてたかもしれない。

溺れたから何だって話ですけど…。

「あなたの故郷は?山の上の集落じゃないんですか?川上から流れて来たようだったから、てっきりそうだとばかり…」

ご婦人が尋ねた。

それは僕が知りたい情報だ。

「いえ…どうなんでしょう。全然覚えてなくて…」

僕の故郷って、何処なんだっけ?

ここじゃないのは確かだ。

「まぁ…。もしかしたら…川に落ちたショックで、記憶をなくされたのかもしれませんね」

そうなのかもしれませんね。

「お名前は?お名前も忘れて…?」

「名前は…ナジュです。ナジュ・アンブローシア…」

「ナジュさんと仰るんですね」

そうなんですよ。

名前だけは覚えているんですが…それ以外の記憶がさっぱり…。

やっぱり怪しいよな?絶対怪しまれてるよな?

このご婦人の、困ったような顔。

「なんか面倒な奴拾っちゃったな…」とか、「何この怪しい奴…」とか思ってそう。

今何考えてるんですか?

相手が何を考えているのか分からないのが、何故か無性にもどかしい。

相手が何を考えているのかなんて、分からないのが当たり前なのに。

さっきからつくづく、僕はどうかしてる。