来ると思ってたから、そんなに驚きはしなかったけど。

そっか。やっぱり来たか。

二人共たっぷりあるだろうね。私への恨み節。

早速、令月君もどきが喋り出した。

「僕はあの人に脅されて、利用されてるんです」

成程、そういう切り口か。

「利用されている?あなたはまだ子供なのに?」

「子供とか、大人とか、関係ないよ…。都合の良いときは大人扱いして、都合が悪くなったら子供扱いするんだよ。いつもそうだよ」

これは事実だから、耳が痛い。

「それに僕は元暗殺者だから…。学院を追い出されたら、行くところも帰る場所もないんだ。だから仕方なく、イーニシュフェルト魔導学院にいるんだ」

「他に行き場をなくし、退路を断って自分の手元に置く…シルナ・エインリーのいつもの手段ですね」

「そう。そうすることによって、他の選択肢を奪うんだよ、あの人は」

…。

「僕は、折角暗殺者組織から解放されたんだから…。それ以外の選択肢だって、たくさんあったはずなんだ。それなのに、結局所属が変わっただけで、戦いになる度に巻き込まれる。戦わされるのは変わらないんだ」

…。

すると、横からすぐり君もどきが言った。

「俺もそうだよ。俺達がさぁ…どういう覚悟で、『アメノミコト』を裏切ってまで、ルーデュニア聖王国についたと思ってるんだろうね。自分のこれまでのアイデンティティ、全部捨ててまで来たっていうのに…」

「気にしてないんだよ、そんなこと。あの人にとって大事なのは…自分に強力な手駒が増えることだけなんだ」

「あとは、研究だよね。俺達みたいに、お互い珍しい魔法や、珍しい魔導適性を持つ人間を手元に置いて観察してみたい。この知識が、後々他の手駒を増やすのに、使えるかもしれないから」

…。

「お二人共、まだお若いですが…。シルナ・エインリーの為に、命を懸けて戦わされてるんでしょうか?」

「そうだよ。いつもそうだ」

「そのせいで死にかけたこともあるけど、あの人はそんなこと、どーでも良いんだよ」

「じゃあ、学院にわざわざ引き入れたのも…」

「僕らが使えそうな手駒だったから。あとは、僕らを洗脳して手駒にしておかないと、自分の命が狙われるからでしょ」

「俺達は帰る場所がないからさ。余計に扱いやすいんだと思うよ。最早脅しだよね…。言葉が優しいってだけで、やってることは、『アメノミコト』の頭領と変わらない」

「うん、僕もそう思う」

…。

「こんな年端も行かない子供に、命を懸けて戦わせるなんて…。本当に、人の命を何だと思ってるんでしょう。シルナ・エインリーは」

…。

「お二人共、本当は嫌ですよね?」

「当然だよ。誰が好き好んで戦いたいものか…。僕は今まで、ずっと血生臭い戦場にいたんだ。だから今度は、平和な場所にいたかったのに」

「俺だってそうだよ。そーいうしがらみからは、一切解放されて生きてみたかった…。でもあの人は、絶対そんなことは許してくれないんだ」

「だから今回だって、僕ら自ら、魔法陣に飛び込んだんだ」

「それが俺達手駒としての、役割だから。役に立たなかったら、俺達みたいな余所者は、いつ追い出されてもおかしくないもんね」

…。

「…子供達にこうまで言わせて、無理矢理血生臭い戦場に送り込むなんて…。しかも、他に行き場のない子供達に…」

…。

「シルナ・エインリーは本当に、救いようのない悪党です。許されざる…世界共通の敵と言えるでしょう」

羽久もどきが、マイクを手に正面を向いた。