マイクが向けられ、ナジュ君もどきが語り始める。

「僕にしてみれば、裏切られたも同然です。彼なら僕を殺してくれると思って、多大な労力と犠牲を払って、わざわざシルナ・エインリーのもとにやって来たのに…」

「計算違いでしたか?」

「計算違いどころか。僕が死にたがっているのに、彼はむしろ、僕を生かそうとしてますからね。良い迷惑です」

…。

…君にとっては、そうだろうね。

「僕は、神殺しの魔法でもなければ死ねません。シルナ・エインリーはその魔法の使い方を知っていながら、敢えて僕を生かし、生殺しにしてるんです」

「それは酷いですね」

「全くです。その癖、僕が不死身であることを利用して、便利な盾代わりにするんです。彼にとって僕は、文字通り便利な肉壁なんですよ」

…。

「盾として使うだけでなく、読心魔法も使うことを強要されています。あれを使うのはとてもしんどくて…。一度は、人格が壊されるほど酷使されたこともあるんですよ」

「なんてことを…。そこまでして、あなたを便利な道具として使いたかったんでしょうか」

「そうでしょうね。僕は特に、駒としては便利ですからね。盾として使えるし、読心の道具としても使える。だからこそ、本来は牢屋に入れられるはずだったところを、わざわざ学院の教員にしてまで、自分の手元に置いたんでしょう」

「そうですか。確かにあなたは、抵抗する術もなく、無理矢理学院に徴用されたんでしたね」

…。

「えぇ。僕に選択肢なんてありませんでしたよ。何せ、牢屋か、教師になるかの二択ですからね。そんなの、もう選ぶまでもないじゃないですか」

「強制されたも同然ですよね」

「はい。僕はシルナ・エインリーに、無理矢理学院に連れてこられたんです。そして、僕が再び敵に回らないよう、今も監視されているんですよ」

…。

「ここまででも既に、シルナ・エインリーの悪行は、充分明らかになっていますが…。今度は、イーニシュフェルト魔導学院の生徒のお二人に、話を聞いてみましょう」

羽久もどきが言った。

そして、舞台に現れたのは、勿論。

「元『アメノミコト』暗殺者の、黒月令月さんと、花曇すぐりさんです」

…だよね。