…数時間後。
俺と後輩は、二人で少女の部屋を訪ねていた。
後輩は、片手に数冊の本を持っていた。
病院の中にある図書室から、借りてきたのだそうだ。
自分で動き回ることが出来ない…どころか。
立ち上がり、歩くことも出来ない、少女の代わりに。
少女が好きなのは、様々な世界各地を冒険する、子供向けのファンタジー小説だった。
自分で歩くことの出来ない世界を、せめて本の中で、空想の中で体験したいのだろう。
自分自身は、狭い病室の中から出ることも出来ないのだから…。
「こんばんは。入るよ」
後輩が、少女の部屋をノックし、扉を開けた。
「!二人共、いらっしゃい!」
少女は、昼間と同じ、弾けるような笑顔で俺達を迎え入れた。
どうやら、体調は悪化していないようだ。
「具合はどうだ?夕食は?ちゃんと食べたか?」
「はい、ちゃんと食べました。元気ですよ」
俺の問いかけに、少女は元気いっぱい、とジェスチャーをしながら答えた。
とてもではないが、元気な身体には見えないんだがな。
相変わらず少女の腕には、点滴の針が刺さったままだ。
この針は、少女の腕から丸一日、抜けることはないのだろうか。
一日中彼女は、点滴の針を腕に刺したまま、過ごさなければならないのだろうか。
それは過酷だろうな。
でも、看護師である俺達が、患者の不安を煽るような言動をする訳にはいかなかった。
だから、あくまで俺も後輩も、笑顔で彼女に接する。
「良かった。はい、これ図書室から借りてきたよ」
後輩が、持って来た本を彼女に渡した。
「わぁ、ありがとうございます、小さいお兄さん」
少女は、本当に嬉しそうに本を受け取った。
「一気に読まないんだよ。少しずつ読むんだよ」
「はい、分かってます」
数冊の本の一気読み、たったそれだけのことさえ。
彼女の身体では、耐えられないことなのだ。
他人事ながら、この幼い少女を不憫だと思った。
すると。
「それじゃあ、小さいお兄さんに…はい、これお礼です」
少女は、一枚の画用紙を後輩の青年に手渡した。
「おっ、ありがとう。何かな?」
「えへへ。開いてみてください」
「じゃあ、見てみようか」
後輩は、画用紙を開いてみせた。
俺と後輩は、二人で少女の部屋を訪ねていた。
後輩は、片手に数冊の本を持っていた。
病院の中にある図書室から、借りてきたのだそうだ。
自分で動き回ることが出来ない…どころか。
立ち上がり、歩くことも出来ない、少女の代わりに。
少女が好きなのは、様々な世界各地を冒険する、子供向けのファンタジー小説だった。
自分で歩くことの出来ない世界を、せめて本の中で、空想の中で体験したいのだろう。
自分自身は、狭い病室の中から出ることも出来ないのだから…。
「こんばんは。入るよ」
後輩が、少女の部屋をノックし、扉を開けた。
「!二人共、いらっしゃい!」
少女は、昼間と同じ、弾けるような笑顔で俺達を迎え入れた。
どうやら、体調は悪化していないようだ。
「具合はどうだ?夕食は?ちゃんと食べたか?」
「はい、ちゃんと食べました。元気ですよ」
俺の問いかけに、少女は元気いっぱい、とジェスチャーをしながら答えた。
とてもではないが、元気な身体には見えないんだがな。
相変わらず少女の腕には、点滴の針が刺さったままだ。
この針は、少女の腕から丸一日、抜けることはないのだろうか。
一日中彼女は、点滴の針を腕に刺したまま、過ごさなければならないのだろうか。
それは過酷だろうな。
でも、看護師である俺達が、患者の不安を煽るような言動をする訳にはいかなかった。
だから、あくまで俺も後輩も、笑顔で彼女に接する。
「良かった。はい、これ図書室から借りてきたよ」
後輩が、持って来た本を彼女に渡した。
「わぁ、ありがとうございます、小さいお兄さん」
少女は、本当に嬉しそうに本を受け取った。
「一気に読まないんだよ。少しずつ読むんだよ」
「はい、分かってます」
数冊の本の一気読み、たったそれだけのことさえ。
彼女の身体では、耐えられないことなのだ。
他人事ながら、この幼い少女を不憫だと思った。
すると。
「それじゃあ、小さいお兄さんに…はい、これお礼です」
少女は、一枚の画用紙を後輩の青年に手渡した。
「おっ、ありがとう。何かな?」
「えへへ。開いてみてください」
「じゃあ、見てみようか」
後輩は、画用紙を開いてみせた。


