「…の容態は、見てのとおり、一ヶ月前に比べて更に悪化している。血液検査の結果から見ても…」
「特に…の値が低くて、薬ではもう抑えきれなくなっており…」
「それについては、…の薬に変えることで何とか対策を…」
「でも、彼女の容態から見ても、最早薬を変えても大した効果は得られないかと…」
…と。
目の前の白衣集団は、一枚のカルテを前に、深刻そうな表情で語り合っていた。
さっきまで、全く状況が掴めなかったが。
何となく分かってきた。
どうやら俺は今、このカルテにある少女の治療に当たる、医療チームのメンバーの一人らしい。
俺がどういう立場なのかは分からないが、このチームに混ぜられている以上。
俺にも、何らかの役割はあるのだろう。
その割には、何も口を挟めていないが…。
誰も俺に話を振ってこない。
まぁ、話しかけられても答えに困るので、話しかけられない方が良いのだが。
しかし。
同じく、先程俺のことを「先輩」と呼び、声をかけてきた青年。
彼もまた、話し合いにはほとんど参加することなく、黙って聞いていた。
彼と俺は、どういう立場なんだろう。
いや、そんなことより。
俺はここで、一体何をやって…。
と、思ったそのとき。
「…それで、二人共」
何やら、検査の結果について話し合っていたメンバー達が、くるりとこちらを向いた。
正しくは、俺と、先程の後輩の二人を。
「普段の様子は、どんな感じですか?何か気になることはありませんか」
白衣チームの中でも、ひときわ貫禄のある中年男性がそう尋ねてきた。
…しまった。
恐れていたことが起きたぞ。
俺に話を振られても、俺は今、自分について気になることの方が多過ぎて、君達が何を話しているのかすら分かってない。
普段の様子って、何の…。
と、思ったら。
「相変わらずです…。自分の具合が悪いこと、気づいてないはずがないんですが…。いつ見ても、明るい調子で」
俺の代わりに、後輩が答えてくれた。
有り難い。
しかし、それも束の間。
「体調を聞いても、返事はいつも『大丈夫』って…。ですよね、先輩」
今度は後輩が、俺に同意を求めてきた。
そう言われても、俺には一体何の話か分からないんだが。
一体、どうやってこの窮地を乗り越えたものか、と思った。
そのとき。
俺は、勝手に口を開いていた。
「特に…の値が低くて、薬ではもう抑えきれなくなっており…」
「それについては、…の薬に変えることで何とか対策を…」
「でも、彼女の容態から見ても、最早薬を変えても大した効果は得られないかと…」
…と。
目の前の白衣集団は、一枚のカルテを前に、深刻そうな表情で語り合っていた。
さっきまで、全く状況が掴めなかったが。
何となく分かってきた。
どうやら俺は今、このカルテにある少女の治療に当たる、医療チームのメンバーの一人らしい。
俺がどういう立場なのかは分からないが、このチームに混ぜられている以上。
俺にも、何らかの役割はあるのだろう。
その割には、何も口を挟めていないが…。
誰も俺に話を振ってこない。
まぁ、話しかけられても答えに困るので、話しかけられない方が良いのだが。
しかし。
同じく、先程俺のことを「先輩」と呼び、声をかけてきた青年。
彼もまた、話し合いにはほとんど参加することなく、黙って聞いていた。
彼と俺は、どういう立場なんだろう。
いや、そんなことより。
俺はここで、一体何をやって…。
と、思ったそのとき。
「…それで、二人共」
何やら、検査の結果について話し合っていたメンバー達が、くるりとこちらを向いた。
正しくは、俺と、先程の後輩の二人を。
「普段の様子は、どんな感じですか?何か気になることはありませんか」
白衣チームの中でも、ひときわ貫禄のある中年男性がそう尋ねてきた。
…しまった。
恐れていたことが起きたぞ。
俺に話を振られても、俺は今、自分について気になることの方が多過ぎて、君達が何を話しているのかすら分かってない。
普段の様子って、何の…。
と、思ったら。
「相変わらずです…。自分の具合が悪いこと、気づいてないはずがないんですが…。いつ見ても、明るい調子で」
俺の代わりに、後輩が答えてくれた。
有り難い。
しかし、それも束の間。
「体調を聞いても、返事はいつも『大丈夫』って…。ですよね、先輩」
今度は後輩が、俺に同意を求めてきた。
そう言われても、俺には一体何の話か分からないんだが。
一体、どうやってこの窮地を乗り越えたものか、と思った。
そのとき。
俺は、勝手に口を開いていた。


