そして、何をするのかと思ったら。
部屋の外に出て、両親に「いくらなんでも、あんな言い方はないんじゃないか?」と訴えるのではなく。
代わりに、勉強机に向って、学生鞄の中のテキストとノートを取り出した。
おい、まさか。
こんな時間に、まだ勉強を始めるつもりなのか?
時間、今午後11時前ですよ。
俺だったら、もう寝てる時間。
それなのに、俺の意志に反して、この身体は勉強を始めようとしていた。
…偉っ…。
俺の爪の垢を煎じて飲ませてあげたい。
そこまでして頑張らなくても。
それでもこの身体の持ち主は、少しでも勉強をして、少しでも成績を上げ。
少しでも、家族に認められようとしていた。
自分の身体ではないはずなのに、その意志を感じるのだ。
心の中は、相反する二つの気持ちがある。
もうやってられるか、どうせ自分には才能なんてないのだから、とやけっぱちになった気持ちと。
それでも、自分でもやれるんだと言うことを見せつけて、褒めてもらいたい、という気持ち。
この二つが、一つの心の中に共存している。
だから、ゲームなんかして諦めかけても、その後勉強を始める。
でも、気持ちだけではどうにもならなかった。
折角テキストを広げたのに、彼は問題を解けない。
数学の問題ですね。さっき塾でやってた。
授業を受けて、何だか思い出した。
俺の記憶が正しければ、確かこの問題は、あの公式を当て嵌めて解くのだ。
そう、そこ。テキストに書いてある公式。それを使うんですよ。
それなのに俺の身体は、無闇にテキストをぺらぺら捲っていた。
おい、何やってんですか。
何で戻るんだ。さっきのページで良いんですよ。
しかし、この身体の持ち主は、この問題の解き方が分からないらしく。
色んな公式を当ててみては、やっぱり違う、とやり直し。
別のページを開いては、また試みて、失敗している。
自分の身体を自分で動かせないのが、もどかしくて仕方ない。
魔導師専攻の俺でさえ分かるような、数学の問題を解けないとは…。
散々、馬鹿だと馬鹿にされていたが。
本当に馬鹿なんですね。
こう言っちゃ悪いかもしれないけど。
そりゃ馬鹿だって言われますよ。あなた、勉強向いてない。
格ゲー極めた方がマシかもしれない。
成程、この家の兄弟は、両方凡人なんですね。
兄は、たかが水魔法でドヤるような、低レベル魔導師。
弟は弟で、数学の基本問題にさえ躓くような、成績劣等生。
いやぁ、あの親あってこの子あり、って奴ですね。
でもこの世界の価値基準では、いくら低レベルだろうが、魔導師であるだけで優秀だと思われるらしく。
そのせいで、兄の方が遥かに優れていると思われている。
腐っても鯛、ってことなんでしょうね。
鯛だろうがなんだろうが、腐ってたら意味ないと思うんですけど。
部屋の外に出て、両親に「いくらなんでも、あんな言い方はないんじゃないか?」と訴えるのではなく。
代わりに、勉強机に向って、学生鞄の中のテキストとノートを取り出した。
おい、まさか。
こんな時間に、まだ勉強を始めるつもりなのか?
時間、今午後11時前ですよ。
俺だったら、もう寝てる時間。
それなのに、俺の意志に反して、この身体は勉強を始めようとしていた。
…偉っ…。
俺の爪の垢を煎じて飲ませてあげたい。
そこまでして頑張らなくても。
それでもこの身体の持ち主は、少しでも勉強をして、少しでも成績を上げ。
少しでも、家族に認められようとしていた。
自分の身体ではないはずなのに、その意志を感じるのだ。
心の中は、相反する二つの気持ちがある。
もうやってられるか、どうせ自分には才能なんてないのだから、とやけっぱちになった気持ちと。
それでも、自分でもやれるんだと言うことを見せつけて、褒めてもらいたい、という気持ち。
この二つが、一つの心の中に共存している。
だから、ゲームなんかして諦めかけても、その後勉強を始める。
でも、気持ちだけではどうにもならなかった。
折角テキストを広げたのに、彼は問題を解けない。
数学の問題ですね。さっき塾でやってた。
授業を受けて、何だか思い出した。
俺の記憶が正しければ、確かこの問題は、あの公式を当て嵌めて解くのだ。
そう、そこ。テキストに書いてある公式。それを使うんですよ。
それなのに俺の身体は、無闇にテキストをぺらぺら捲っていた。
おい、何やってんですか。
何で戻るんだ。さっきのページで良いんですよ。
しかし、この身体の持ち主は、この問題の解き方が分からないらしく。
色んな公式を当ててみては、やっぱり違う、とやり直し。
別のページを開いては、また試みて、失敗している。
自分の身体を自分で動かせないのが、もどかしくて仕方ない。
魔導師専攻の俺でさえ分かるような、数学の問題を解けないとは…。
散々、馬鹿だと馬鹿にされていたが。
本当に馬鹿なんですね。
こう言っちゃ悪いかもしれないけど。
そりゃ馬鹿だって言われますよ。あなた、勉強向いてない。
格ゲー極めた方がマシかもしれない。
成程、この家の兄弟は、両方凡人なんですね。
兄は、たかが水魔法でドヤるような、低レベル魔導師。
弟は弟で、数学の基本問題にさえ躓くような、成績劣等生。
いやぁ、あの親あってこの子あり、って奴ですね。
でもこの世界の価値基準では、いくら低レベルだろうが、魔導師であるだけで優秀だと思われるらしく。
そのせいで、兄の方が遥かに優れていると思われている。
腐っても鯛、ってことなんでしょうね。
鯛だろうがなんだろうが、腐ってたら意味ないと思うんですけど。


