魔導師…。俺は魔導師のはずなのだが。

何故か、得意の空間魔法は使えず。

それどころか、他の魔法も全然使えない。

多分この身体、俺が今追体験しているこの身体の本来の持ち主は、魔導適性がないのだろう。

だから、その身体に宿っている俺も、魔法が使えない…んだろうと思うが。

確か、不真面目に受けていた、魔導理論の授業の記憶によれば。

魔導適性の有無は、身体ではなく魂に宿るもの。

すなわち、どの身体に寄生していようが、俺という存在に魔導適性がある限り。

例え本来魔導適性のない身体に宿ったとしても、関係なく魔法は使えるはずなのだが。

何で使えないんだろうなぁ。

今この状況で魔法が使えないのは、それはそれで、結構困るのだが?

普段の状況なら、別に魔法が支えようと使えまいと、そんなことは構わないのだが。

今だけは、使えないと困る。

肝心なときに使えないんだから、全く…。

しかも、それだけではない。

「よーし。今日はここまで。宿題は、来週までに問題集三章の、25〜50問をノートに解いてくること。以上!」

ようやく長かった授業が終わり、帰れる、と思った途端。

例のハゲ教師が、つかつかと俺に歩み寄ってきた。

何だコラ、と思っていたら。

「お前だけ、来週までに練習問題1章と2章、復習してこい。お前は馬鹿だから、それくらいやらないと、周りに追いつかないだろう」

…イラッ。

何だこいつ。さっきから俺に喧嘩を売ってるのか?

そういえば、それどころじゃないからさっきまで無視していたけど。

なんかお前さっきから、途轍もなく俺に失礼なことを言ってなかったか?

あと、兄と比べて何とやら…みたいなことも言ってたような。

「ちゃんとやってなかったら、また親御さんに連絡するからな。精々頑張れよ」

ポンポン、と俺の頭を軽く叩いて、ハゲ教師は相変わらず、馬鹿にしたような口調で言った。

さっきから、こいつ…。

…超ムカつくんですけど?

それと、そんな教師の言動を聞いて、いちいち鼻で笑ってる生徒達も。

なんて非常識さだ…。俺が通っていた学校を見習って欲しい。

俺が通っていた学校…。一体名前は何と言ったっけ?

母校の名前が思い出せない。

…やっぱり俺、魔法の使い方だけじゃなく、記憶も混濁しているんだ。

そうですよね。でないとおかしい。

魔法が使えるはずの俺が、何で魔法の使えない、謎の身体に収まっているのか。

絶対に何か理由があるはずなのに、それすら思い出せないのだから。

一番大事なことは、ちゃんと覚えてるのになぁ。

とにかく記憶を取り戻さなければ。

そうしないと、何も始まらない。