…ったく。

何処の誰だよ。俺の夢を邪魔したのは…。

俺は渋々目を開け、周囲の状況を確認した。

…。

「…何処?」

俺は思わずそう呟いていた。

広い部屋に、机がいくつも並び。

部屋の奥には、黒板がついている。

教室っぽい場所のようだが、ここは学校なのか?

しかし、こんな教室の風景は記憶にない。

自分が、全く見覚えがない場所にいることにようやく気がついた。

しかし。

「何を寝惚けてるんだ、馬鹿が」

後ろからまた、怒ったような声が聞こえ。

再度、後頭部をはたかれた。

いった。

さっきから何なんだ、人の頭をサンドバッグみたいに。

何奴、と思って振り返ると、そこには。

開いたテキストを片手に持った、中年のおっさんが立っていた。

頭…ハゲてるな。

こいつか?自分の頭はハゲてる癖に、人様の頭をバシバシ叩いているのは。

いくらお前、自分の頭が焼け野原だからって、人のふさふさヘアーが羨ましいからって。

人様の頭を殴ったって、お前の髪は復活しないぞ。

しかもさっき、俺に向かって「馬鹿」って言ってなかった?

確かに俺は馬鹿かもしれないが、しかしハゲにだけは言われたくない。

更にそのおっさんは、偉そうな態度で言った。

「授業に集中しろ。そんなだから、お前はいつまでたっても馬鹿なんだよ」

…イラッ。

おい。何様だこの野郎。

何で夢から覚めたと思ったら、いきなり知らないハゲたおっさんに、二度も叩かれ。

その上、二度も馬鹿呼ばわりされなきゃならないんだ。

自慢だが俺の心は、そんなに広くはない。

こいつが何者なのかは分からないが、初対面でここまで無礼を働いてきたのだから。

こちらも礼を見せる必要はない。

手始めに、頭に残っているなけなしの髪の毛を、一掴み鷲掴みにしてやろう…と。

したのだが。

「…済みません」

何故か、俺の口は勝手に動いていた。