食事を終えて、部屋に戻り。
俺は、夜になるのを待った。
昼間は記憶がぼんやりとして、ほとんど思い出せなかったが。
今は頭の中がだいぶ、はっきりしてきていた。
…俺の名前は、吐月だ。吐月・サーキュラス。
長きに渡る放浪を経て、イーニシュフェルト魔導学院の学院長に会い。
長年の軛から解放され、聖魔騎士団で魔導部隊の大隊長をやっている。
そこまでは、思い出せた。
雪刃のことも、ベルフェゴールのことも覚えている。
でも、それ以上のことは分からない。
何故俺は、知らない名前で呼ばれ、知らない家族のもとで暮らし、知らない学校に通って、しかもいじめられているのか。
よく分からないが、多分ここは、そういう世界なんだろう。
今はそう納得するしかない。
そして、どうやらこの世界には、魔法の概念が浸透していないらしい。
そういう世界は、さして珍しくない。
俺も雪刃との因縁で、様々な次元を巡り、様々な世界に滞在したものだが。
中には、魔法とは全く無縁の世界もあった。
だからこの世界もきっと、魔法の概念がないのだろう。
それにしてもおかしいのは、俺が魔法を使えないことだ。
こればかりは、納得が行かない。
それに、俺は吐月・サーキュラスのはずなのに、別の他人のように扱われている。
しかも俺は、その他人の記憶まで共有しているのだ。
知らないはずの学校やコンビニの地図が分かったり、見覚えのない家で、見覚えのない家族と暮らしているのも。
これもおかしい。
こんなことは、生まれて初めてだ。
今まで色々な世界を回ったけれど、どの世界でも、俺は俺だった。
魔法の概念があろうがなかろうが、俺は魔導師なんだから、魔法は使えたし。
他の名前で呼ばれることも、知らない他人に家族として扱われることも。
記憶にないのに、身体が勝手に覚えているなんてことも、一度もなかった。
これは今までの、異次元の放浪とは違う。
自分の姿をしているのに、他の誰かになったかのようだ。
本当にそうなのか?俺は本当に、俺の知らない他人になってしまったのか?
そう考えれば、魔法が使えないのも納得が行く。
でも、もしそうなら、何でそんなことに?
俺はこの世界に来る前、何をしていた?
何が原因で、こんなことになっている…?
俺は…この身体は…一体、誰なんだ?何者なんだ?
俺は今、自分が自分であると言い切ることが出来ない。
その確証がない。
「…せめて、ベルフェゴールがいてくれたらな…」
俺は、ベッドに横たわりながら、天井を見上げて呟いた。
…こんなに色んな疑問があるのに、相槌一つ打ってくれる人がいないっていうのは、寂しい。
人って言うか…魔物なんだけど…。
…でも、ベルフェゴールに会う前は。
こんな風に、ずっと自問自答だったんたよな。
雪刃は…俺の質問に答えるようなことはしなかったから…。
二千年以上、そうやって一人で自問自答していたのに。
ベルフェゴールと一緒になってからは、一日中、黙っているということはなかった。
朝になったら、ベルフェゴールが顔に激突して、俺を起こしてきたりして…。
体重軽過ぎて、激突されてもさして痛くないんだけど…。
で、俺が起きたら、餌を寄越せと言わんばかりに、血を強請ってきたり…。
それが何て言うか…我儘な猫を飼ってるみたいで、結構可愛いんだけどな…。
常日頃、「俺様は冥界最上位の魔物だ!最強なんだぞ!」とか威張ってるから、可愛いなんて本人には言えないけど…。
…ベルフェゴールがいてくれるのと、いてくれないとのでは、こんなに気分が違うんだな。
安心感が全くないんだから。
俺は、夜になるのを待った。
昼間は記憶がぼんやりとして、ほとんど思い出せなかったが。
今は頭の中がだいぶ、はっきりしてきていた。
…俺の名前は、吐月だ。吐月・サーキュラス。
長きに渡る放浪を経て、イーニシュフェルト魔導学院の学院長に会い。
長年の軛から解放され、聖魔騎士団で魔導部隊の大隊長をやっている。
そこまでは、思い出せた。
雪刃のことも、ベルフェゴールのことも覚えている。
でも、それ以上のことは分からない。
何故俺は、知らない名前で呼ばれ、知らない家族のもとで暮らし、知らない学校に通って、しかもいじめられているのか。
よく分からないが、多分ここは、そういう世界なんだろう。
今はそう納得するしかない。
そして、どうやらこの世界には、魔法の概念が浸透していないらしい。
そういう世界は、さして珍しくない。
俺も雪刃との因縁で、様々な次元を巡り、様々な世界に滞在したものだが。
中には、魔法とは全く無縁の世界もあった。
だからこの世界もきっと、魔法の概念がないのだろう。
それにしてもおかしいのは、俺が魔法を使えないことだ。
こればかりは、納得が行かない。
それに、俺は吐月・サーキュラスのはずなのに、別の他人のように扱われている。
しかも俺は、その他人の記憶まで共有しているのだ。
知らないはずの学校やコンビニの地図が分かったり、見覚えのない家で、見覚えのない家族と暮らしているのも。
これもおかしい。
こんなことは、生まれて初めてだ。
今まで色々な世界を回ったけれど、どの世界でも、俺は俺だった。
魔法の概念があろうがなかろうが、俺は魔導師なんだから、魔法は使えたし。
他の名前で呼ばれることも、知らない他人に家族として扱われることも。
記憶にないのに、身体が勝手に覚えているなんてことも、一度もなかった。
これは今までの、異次元の放浪とは違う。
自分の姿をしているのに、他の誰かになったかのようだ。
本当にそうなのか?俺は本当に、俺の知らない他人になってしまったのか?
そう考えれば、魔法が使えないのも納得が行く。
でも、もしそうなら、何でそんなことに?
俺はこの世界に来る前、何をしていた?
何が原因で、こんなことになっている…?
俺は…この身体は…一体、誰なんだ?何者なんだ?
俺は今、自分が自分であると言い切ることが出来ない。
その確証がない。
「…せめて、ベルフェゴールがいてくれたらな…」
俺は、ベッドに横たわりながら、天井を見上げて呟いた。
…こんなに色んな疑問があるのに、相槌一つ打ってくれる人がいないっていうのは、寂しい。
人って言うか…魔物なんだけど…。
…でも、ベルフェゴールに会う前は。
こんな風に、ずっと自問自答だったんたよな。
雪刃は…俺の質問に答えるようなことはしなかったから…。
二千年以上、そうやって一人で自問自答していたのに。
ベルフェゴールと一緒になってからは、一日中、黙っているということはなかった。
朝になったら、ベルフェゴールが顔に激突して、俺を起こしてきたりして…。
体重軽過ぎて、激突されてもさして痛くないんだけど…。
で、俺が起きたら、餌を寄越せと言わんばかりに、血を強請ってきたり…。
それが何て言うか…我儘な猫を飼ってるみたいで、結構可愛いんだけどな…。
常日頃、「俺様は冥界最上位の魔物だ!最強なんだぞ!」とか威張ってるから、可愛いなんて本人には言えないけど…。
…ベルフェゴールがいてくれるのと、いてくれないとのでは、こんなに気分が違うんだな。
安心感が全くないんだから。


