神殺しのクロノスタシスⅣ

ベルフェゴールがいれば、俺は自分の身に何が起きたのか、彼から説明を聞くつもりだった。

ベルフェゴールは、俺と同じものを見聞きしているから。

俺が忘れても、ベルフェゴールは忘れない。

しかし、頼みの綱であるベルフェゴールがいないのでは…。

俺は、何もかも自力で解決するしかない。

そしてそれは、非常に状況か悪いことを意味する。

良くも悪くも、俺は冥界の魔物達に依存して生きてきたから。

幼い頃から雪刃に精神を犯され、その支配は、恩人達に取り払ってもらったけれど。

その後は、代わりにベルフェゴールと契約し、ベルフェゴールに頼りながら生きてきた。

召喚魔導師なのだから、それは仕方ないのかもしれないが。

…もっと、分かりやすく言うと。

俺は、ベルフェゴールがいなければ、大したことは出来ないのだ。

俺の身体がそもそも、召喚魔導師として非常に適した身体であるそうで。

冥界の魔物からすれば、食べ甲斐のある「ご馳走」らしい。

だからこそ、冥界最上位の魔物である、ベルフェゴールと契約していたのだが…。

そのベルフェゴールがいなければ、俺は一山いくらのレベルの、平々凡々な魔導師でしかない。

しかも。

「…eci」

俺は、そう呟いて魔法を発動させた。

一応得意な部類に入る、氷魔法だ。

しかし。

目の前がパキパキと音を立てて凍る…どころか。

冷気すら、ほとんど感じ取れなかった。

指先が、気持ちちょっとひんやりしたかな?くらい。

…魔法が使えない。

ベルフェゴールがいない。

かと言って、雪刃が俺の身体を再び支配した訳でもない。

じゃあ、この世界は一体…何なんだ?

俺はベッドに仰向けになって、しばし天井を見ながら考えた。

誰も教えてくれないのなら、自分で考えて、行動するしかない。

でも、何も思い出せないのだ。

自分が何者なのかは、かろうじて分かる。

しかしそれ以外のことが、頭の中から抜け落ちている。

俺はどうして…何があって…こんなところに行き着いたのだろう?