神殺しのクロノスタシスⅣ

俺が無言で差し出したお弁当箱を、叔母さんは受け取り。

そして、壊された蓋の部分を見て、顔を曇らせた。

あ、ごめんなさい。

俺が壊したんじゃないけど、何だか凄い罪悪感。

「これ…。また、同じクラスの子にやられたの?」

案の定、叔母さんは壊れたお弁当箱を見て、そう聞いた。

「…ごめんなさい」

俺は、自分が悪い訳じゃないと分かっていながら、謝罪の言葉を口にした。

「…」

叔母さんは、無惨なお弁当箱を見て。

「…お昼、ちゃんと食べられた?」

と、小声で尋ねた。

どう答えて良いものか迷ったが、俺は結局。

「…」

無言を貫いて、否定の意を伝えた。

黙っているんじゃ、「食べられませんでした」と言ってるようなものだ。

叔母さんも、俺の無言でそれを察したらしく、しばし無言になった。

…気まずい。非常に気まずい雰囲気だ。

俺はどうしたら良いんだろう?

そもそも、俺が叔母さんと呼んでいるこの人は一体誰、

「やっぱり、転校する気はないの?」

叔母さんは、いきなりそう尋ねてきた。

て、転校?

何のことだ?

「別に良いのよ、私達に気兼ねしなくても。いっそ、地元の子がいない、市外の高校に転校したら?学費のことは気にしなくて良いから」

「うん…分かってるけど…」

本当は何も分かってないのだが、俺の口は勝手に動いていた。

「…別に、大丈夫だから。居候させてもらってるだけでも、充分感謝してるし…」

と、俺は言っていた。

あ、俺って居候なんだ。

だから、叔母の家にいるんだな。

「これ以上、迷惑かけたくないから。大丈夫」

「でも…」

「本当に大丈夫だよ。たった三年、我慢すれば良いだけだし。このくらい、どうってことないから」

俺は、気丈な振りをしてそう言った。

全て、俺の意志ではなく、勝手に口から出てきた言葉だ。

「…」

叔母さんは、まだ何か言いたそうだったが。

俺の決意が固いのを見て、結局それ以上は何も言わなかった。