神殺しのクロノスタシスⅣ

…仕方ない。

ここは、俺が代わりに。

「悪いな、証明書は俺の分だけなんだが、これで納得してもらえるか?」

俺は、認知症を発症したであろうシルナの代わりに、聖魔騎士団魔導部隊所属を示す、身分証明書を差し出した。

そこには、ちゃんと名前、写真、聖魔騎士団の印鑑付きで、俺が聖魔騎士団魔導部隊特務隊隊長であることを示す文言が、簡潔に記されていた。

「羽久が私に失礼なことを考えてる気がするけど…今は羽久に助けられてるから、何も言えない…」

シルナが何やらぶつくさ言ってるが、無視だ。

「え…!ほ、本当に…!?」

エンブレムと違って、この証明書は、レプリカの製造はおろか、コピーも禁止されている。

恐らく初めて目にするであろう、この証明書に、駅員さんもびっくりである。

「あぁ、本当だ。聖魔騎士団から命じられて、ここに来た。シャネオンでトラブルが起きたらしいから、ちょっと見に行ってくれってな」

と、俺は言った。

口から出任せだ。

聖魔騎士団は何の関係もない。ただ、うちのシルナが「生徒を迎えに行くんだ!」と我儘言うから、来ただけで。

でも、こう言った方が、相手にしてもらえるだろう?

後でシュニィに頼んで、後付で指令書作っといてもらおう…。ごめんな。

「そ、そうでしたか。そうとも知らず、ご無礼を…」

駅員さんは、慌てて頭を下げたが。

あんた、今日もう何回も何回も、下げなくても良い頭、下げ過ぎだから。

あんたのせいじゃないんだから、もう謝らなくて良い。

「とりあえず、事情説明してもらえるか?」

「は、はい。どうぞ、中でお話します」

と、駅員さんは、特別に駅員室に案内してくれた。