神殺しのクロノスタシスⅣ

「どうでしょうか、学院長先生…」

シュニィが、恐る恐る尋ねた。

「…」

シルナは、やはり無言。

…やっぱり、シルナは何かを知ってる。

俺はそう確信したが、口は出さなかった。

「あれが本当に、神に触れる力…。そんな恐ろしい力なら、ベリクリーデさんが言うように、私達は近寄ることは出来ません」

「でも…それなら、そんな力なら、どうしてここにあるんでしょう?何故そんな強大な力を、『サンクチュアリ』が持っているんでしょうか」

シュニィとエリュティアが言った。

…確かに。

素人目から見ても、あれが危険な力であることは分かる。

それなのに、何故そんな力が、ここにある?

あれは何なんだ?

何故、『サンクチュアリ』はそんな力を手に入れられたんだ?

聖魔騎士団魔導部隊でさえ持て余しているというのに…。

何故、『サンクチュアリ』がそれを手に入れ、罠を仕掛けたんだ?

それに…。

「消えた四人もそうだが…。ここにいたはずの、『サンクチュアリ』のメンバーは?夜逃げでもしたのか?」

俺は、シュニィ達に尋ねた。

ただの夜逃げなら、エリュティアの探索魔法で探せるだろうと思ったのだ。

しかし。

「分かりません…。『サンクチュアリ』のメンバーだと見られている人物の行方も、不明なんです」

「…!」

「消えた四人と同じように…彼らにも、『痕跡』がなくて…」

エリュティアが辿れる「痕跡」が…ない?

まさか…それじゃ…。

「『サンクチュアリ』のメンバーも…一緒に消えたって言うのか?吐月達と同じように?」

「…確かなことは言えませんが、恐らくは…」

「…そんな…」

じゃあ、『サンクチュアリ』の一員を探し出し、事情聴取を行うことは出来ない。

手がかりとなるものが…何もない。

「…学院長先生…」

「…」

シュニィやエリュティアが、シルナに縋るような眼差しを向けたが。

それでも。

「…」

シルナは、やはり何も言わなかった。

余程、シルナに話すよう促したいと思ったが。

それでも、俺は何も言えなかった。

無理に聞き出すことは…シルナの心の傷に触れるような気がして。

そして。

「…」

そんなシルナを、ジュリスが黙って見ていた。