神殺しのクロノスタシスⅣ

「…」

シルナは、しばし考えるようにして、無言だった。

しばらくの沈黙が続いた後、シュニィは堰を切ったように言った。

「…あ、あの。申し訳ありません。その…あまり思い出したくないことなら、無理にとは…」

シルナにとって、神々の知識…つまり。

イーニシュフェルトの里にいたときの記憶は、努めて思い出したくないものだろうと思ったのか。

シュニィは、慌てて引き下がろうとした。

しかし。

「いや…大丈夫だよ」

ようやく、シルナがそう口を開いた。

「思い当たる節が…全くない…訳じゃない」

「…!それは…」

「でも、実際に目にしてみないことには、判断出来ない…。その水晶玉は、今何処に?」

そうだ、水晶玉の今の在処。

ちゃんと確認しておかないと、五人目、六人目の被害者が出るぞ。

どうやら魔法陣には、謎の発動条件があるようだが。

間違って魔法陣の中に立って、また行方不明者が増えました、なんて洒落にならない。

しかし、そこはシュニィ、抜かりはなかった。

「持ち出すのは危険ですから、その場に安置しています。『サンクチュアリ』の建物は…聖魔騎士団が包囲して、誰も入れないように見張っています」

成程、さすが。

それなら、更なる被害者が出ることもなかろう。

「分かった。じゃあ…ちょっと、行ってみても良いかな?見せてもらうこと、出来る?」

「あ、はい。勿論です。学院長先生なら…」

学院長先生なら…か。

「悪いが、シルナが行くなら、俺もついていくぞ」

もし何かあって、シルナが消えてしまったら。

今度は、俺が自分を許せない。

しかしシュニィは、それも分かっているという風に頷いた。

「はい、大丈夫です…。お二人で来てください」

良かった。

俺も同伴して良いそうだ。

「しかし…羽久さん」

「ん?」

「このようなことは、羽久さんにとっては辛いかもしれませんが…。ベリクリーデさんがあの水晶玉に反応したということは、恐らく…あなたも…」

…あぁ。

シュニィの言わんとすることは分かる。

俺も多分、その水晶玉とやらに反応するかもしれない、って言いたいんだろう?

上等だ。

「分かってる。大丈夫だ」

「…宜しく、お願いします」

シュニィは、再び深々と頭を下げた。

だから、それやめろって。

気にするなよ。

聖魔騎士団や、消えた四人の為にも。

この一大事に、俺達が何もしないとあっては…自分で自分を許せないからな。

「それじゃ…案内してもらえるかな」

「分かりました」

俺とシルナ、そしてシュニィは。

イレース達に学院を任せて、『サンクチュアリ』の活動拠点とやらに向かった。