神殺しのクロノスタシスⅣ

「部屋に入ったときは、気づかなかったんですが…。突如として魔法陣が出現した途端、その水晶玉が、赤い光を放っていたんです」

「…赤い光…」

「それに、不思議なことに…何故か、アトラスさんだけは消えなかったんです」

…は?

「消えた四人は、魔法陣の中に立っていました。私とアトラスさんも魔法陣の中にいたんですが、アトラスさんが突き飛ばしてくれて…私は、無事だったんですが…」

「アトラス君も…消えなかったの?魔法陣の中に残ってたのに?」

「はい。何故か…」

…何でだ?

魔法陣の中にいた者は、咄嗟に突き飛ばされて魔法陣から出たシュニィを除いて、皆消えたんだろう?

何で、魔法陣の中にいたにも関わらず、アトラスだけは消えなかった…?

「魔法陣の発動条件に…何か仕掛けがあるんだろうね。他の四人には当て嵌まって、アトラス君だけは当て嵌まらない何かが…」

「はい…。そうだと思います」

「…」

…まぁ、何にせよ。

アトラスだけでも、消えなくて良かった。

もしアトラスまで消えていたら、シュニィはこんなに落ち着いてはいられなかっただろうから。

自分を庇って消えてしまったのなら、余計に。

「…それと、もう一つ気になることが…」

「?何?」

「先程話した、水晶玉のことなんですが…」

水晶玉?

「ベリクリーデさんが、その水晶玉を指差して…『あれに近寄ってはいけない。あれは神に触れる力だ』と…そう仰ったんです」

「…!」

…何だって?

ベリクリーデが…言ったのか?「神に触れる力」だと?

「それって…」

「はい…。ですから、差し出がましいですが…学院長先生にご相談を、と思いまして…」

シュニィが、真っ先にここに来た理由が分かった。

戦力として、シルナや俺達の力を借りたかっただけではない。

シルナの、神々に関する知識も含めて…助言をもらいに来たのだ。

ベリクリーデのその発言は、決して無視して良いものではない。

だって、彼女が言うなら、言葉の重みが違う。

身体の内に神を宿す、ベリクリーデの言葉だから…。

…まぁ。

こればかりはあんまり、他人のことは言えないのだが。

「何か…思い当たる節はありませんでしょうか?あの、不思議な水晶玉について…」

シュニィは恐る恐るという風に、シルナに尋ねた。